公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

兄妹談義(イルフェア視点)

「ふぅ……」

 オルティナとルネリアに引っ張られて部屋に入っていくエルーズを見ながら、私はゆっくりとため息をついた。
 どうやら、今回の事件は二人が解決してくれたようだ。とりあえず、これで一安心である。

「……まあ、丸く収まって良かったと思う反面、本当に大丈夫なのかと思わなくもないな」
「あら? そう?」
「いや、エルーズは兄貴とはいえ、男な訳だし、妹と一緒に寝るというのは、なんというか変じゃないか?」
「まあ、エルーズの年を考えると普通ではないかもしれないわね。でも、あの子は今までそんな普通を体験してこなかった訳だし……」
「まあ、そうかもしれないが……」

 隣のウルスド的には、兄が妹と一緒に寝るのは微妙なことらしい。
 別に、そう思うのもそれ程おかしいことではないだろう。実際問題、この話を他の貴族なんかに話していいかといわれると、微妙な所だ。
 兄と妹の仲が良いなんて、思ってくれる方が少ないだろう。あることないこと言われるのは、容易に想像できる。

「そう思うなら、ウルスドがエルーズを誘っても良かったんじゃない?」
「いや、男同士で一緒に寝るというのも、なんだか変な話だろう?」
「そうかしら? お兄様はどう思う?」
「俺に話を振るな」

 男同士の同衾というのは、どうなのだろうか。そう思った私に対して、ウルスドもアルーグお兄様もあまりいい反応はしなかった。
 別に、私はオルティナやルネリアと一緒に寝るのに抵抗はない。むしろ、朝のことがなければ、ルネリアの部屋を訪ねてみようかと思っていたくらいだ。
 だが、男兄弟では、そういう訳にはいかないようである。微笑ましくて、いいと思うのだが。

「……でも、ウルスドなんかは、昔お兄様にべったりだったわよね?」
「え?」
「お兄様は覚えているでしょう? ウルスドがいつも後ろを追いかけていて、私は少し嫉妬していたことをよく覚えているわよ」
「ふん……」

 私の思い出話に、お兄様はため息をついた。それは、多分覚えているからこそ出たため息だろう。
 ウルスドは、アルーグお兄様に良く懐いていた。お兄様を取られて寂しい、弟が懐いてくれなくて寂しい。二つの意味で、私もよく嫉妬していたものである。

「その代わり、お前はオルティナに懐かれていただろう?」
「それは、そうだけど……でも、そういう問題ではないでしょう?」

 ウルスド以外の下の子達は、彼とは少し違っていた。
 エルーズはどちらにも平等な感じで、オルティナは私の方によく懐いていたのである。
 でも、私としてはウルスドにだってそんな風に接してもらいたかった。他の子に慕われていたとしても、それは変わらないのだ。

「欲張りな奴だ」
「でも、お兄様もそうだったんじゃないの?」
「それは、どうだかな……」
「やっぱり、お兄様は素直じゃないのね?」

 基本的に、アルーグお兄様はあまり素直ではない。本当は、皆のことが大好きなのに、それを表に出そうとしないのだ。
 そんな風な会話をしながら、私達は笑い合うのだった。
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