公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

夜中のお茶会(ウルスド視点)

 エルーズの件を見終わった後、俺達は兄上の執務室に来ていた。
 せっかくだから、三人でお茶でもしようと姉上が提案したからである。
 もう夜中であるため、兄上は反対するかと思ったが、普通に受け入れた。という訳で、三人でお茶しているのだ。

「いい機会だから、少し聞きたいんだけど……二人は、婚約者とどんな感じなの?」
「え?」

 そこで、姉上は俺と兄上にそんな質問をしてきた。
 それは、中々話し辛いことだ。実の姉に、婚約者とのことを話すのは、なんというか少し気恥ずかしい。

「お兄様なんて、もうすぐ結婚するのよね? カーティアさんとはどう?」
「……」
「お兄様、聞いている?」

 姉上の質問に、兄上はわかりやすく目をそらした。どうやら、彼にとってそれは答えにくいことだったようだ。
 それは、そうだろう。実の妹に婚約者とのことを話すのも、気恥ずかしいことであるはずだ。

「イルフェア、お前は最近少し明るくなったな」
「え?」

 そこで、兄上は唐突にそんなことを言った。それは、明らかに話をそらそうとしている。
 だが、その指摘はもっともなものだ。確かに、イルフェア姉上は最近は、なんだか前より明るくなった気がする。

「何か心境の変化でもあったのか?」
「そうね……まあ、ルネリアのおかげかしら?」
「うん? ルネリアが何か関係しているのか?」
「ええ、あの子が嬉しいことを言ってくれたのよ」

 姉上は、嬉々としてルネリアと何があったかを話してくれた。
 どうやら、姉上の心にあった憂いをルネリアが晴らしてくれたようだ。

「なるほど……そっか、姉上もそうだったのか」
「あら? ウルスドもそうなの?」
「ああ、実はそうなんだ」

 姉上の話を聞いて、俺も自分とルネリアの間にあったことを話した。
 すると、姉上が楽しそうな笑みを浮かべ始めた。それは、どういう意味の笑みなのだろうか。

「ウルスドは、婚約者と仲良くしているみたいね?」
「え? あっ……」

 姉上の言葉で、俺は気付いた。俺が今した説明の中には、クレーナとのこともしっかり含まれていたのである。
 なんだか、急に恥ずかしくなってきた。俺は、なんてことを言ってしまったのだろうか。

「……お前達、少しいいか?」
「え?」
「な、なんだ?」

 そこで、兄上がゆっくりとそう切り出してきた。
 その声は真剣だ。多分、とても重要なことを話そうとしている。
 俺も姉上も、それを察して少し身構えた。今までの雰囲気のままではできない会話だと思ったからだ。

「今から俺がする話は、この公爵家に起こっていた問題の話だ。それをお前達には知っておいてもらいたい」
「もしかして……」
「ああ、ルネリアのことだ」
「ルネリアの……」

 兄上の言葉に、俺達は息を呑む。ルネリアのこと、その一言で、兄上がこれから話すことがどれだけ重要か理解できたからだ。
 こうして、俺達は兄上から話を聞くのだった。
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