公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

知らせのついでに

 エルーズお兄様とオルティナお姉様と一緒に寝た次の日、私はお母様に呼び出されていた。なんでも、話があるらしいのだ。
 少し前までは、お母様に呼び出されるというのは緊張した。だけど、今はもうそんなことはない。

「さて、それじゃあ、早速本題に入る……というのは、なんだか味気ないかしら?」
「え? そうですか?」
「ええ、そうよ。だから、ルネリア、少しこっちに来てもらえないかしら?」

 お母様は、そう言って私に手招きをしてきた。とりあえず、そちらに来て欲しいということだろうか。
 よくわからないが、私はそれに従ってお母様の方に行く。すると、彼女は腕を広げてきた。

「えっと……」

 それが何を表していたかは、すぐに理解できた。飛び込んできて欲しいということだろうか。
 そういえば、お母様は以前も私を抱きしめてくれた。もちろん私を安心させるためというのもあったとは思うが、それはもしかして、彼女がそうするのが好きだったからなのかもしれない。
 何故そう思ったかというと、そうやって抱き着くのが好きな人を私が知っているからだ。オルティナお姉様のあの性質は、お母様から受け継がれたものなのかもしれない。

「……失礼します」
「ええ」

 別に断る理由もないので、私はお母様の胸に飛び込んだ。
 そんな私を彼女はしっかりと抱きしめてくれる。
 さらに彼女は、ゆっくりと私の頭を撫でてきた。その優しさに溢れた仕草に、私は少し考える。

「ルネリア……」

 お母様は、以前から優しかった。だが、なんというか今日は少し違う気がするのだ。
 もしかしたら、お母様には何か心境の変化があったのかもしれない。上手くは言えないが、そう思う程にお母様は以前までとは違う気がするのだ。

「それで、今日あなたを呼び出した理由なんだけど……」
「あ、はい……」

 お母様は、そのままの状態で話を始めた。
 ということは、今日の話はそんなに深刻な話ではないのだろう。もしそういう話だったら、少なくとも話す前にはこの状態を解くはずだからだ。

「あなたの村の村長さんがね、今度この公爵家に来るの」
「え? そうなんですか?」
「ええ、少し話がしたくて、私が呼んだの」

 村長がこの公爵家に来る。それは、私にとって嬉しい知らせだった。
 かつていた村の人達は、皆いい人ばかりだった。そんな人達とまた会うというのは、私にとってとても喜ばしいことなのである。

「それでね、村長と一緒にある子も来るみたいなの。村長が、どうしてあなたに会いたいと言っているからって」
「ある子?」
「ケリーといっていたわ。あなたの親友だって聞いたのだけれど」
「そ、そうなんですか!」
「やっぱり、嬉しいのね」

 ケリーというのは、私が村にいた時に仲良くしていた子だ。
 村長が来るのはもちろん嬉しいが、ケリーが来てくれるというのは、さらに嬉しい知らせだ。
 私達は、いつも一緒に遊んでいた。そんな親友に再会できると知り、私は思わず笑顔になるのだった。
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