公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

似ている二人(エルーズ視点)

 僕は、少しふらふらしながら廊下を歩いていた。
 今日は、ルネリアの村の村長さんやお姉様の婚約者が来る日だ。そのため、ラーデイン公爵家は大変な状態である。
 大抵の場合、僕はそういう時に部屋に籠っていることが多い。迷惑にならないように、そうすることにしているのだ。

「ふう……」

 ただ、今日は少しだけ部屋から出てきていた。なぜなら、少し気になることがあったからだ。
 ことの発端は、ルネリアとの会話である。彼女からあることを聞いてから、僕はそれがとても気になっているのだ。
 その会話とは、今日この公爵家に来ている人に関係している。僕は、一目だけでもその人に会ってみたいのだ。

「……あの、大丈夫ですか?」
「え?」

 そんな僕に話しかけてくる人がいた。その人は、中性的な顔立ちの女の子だ。服装からして、恐らくは平民だろう。
 僕は、少し驚いていた。まさか、廊下で探していた人と会うとは思っていなかったからである。

「なんだか、辛そうですけど……」
「あ、えっと、大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう」

 動揺しながらも、私は彼女にそう言った。
 別に、今日はそこまで体調が悪い訳ではない。そのため、まずは安心してもらいたかったのである。

「……君は、ルネリアの友達だよね?」
「え? あ、はい。そうです」
「僕は、ルネリアの兄のエルーズ。君の名前を教えてもらってもいいかな?」
「あ、ケリーです」
「ケリーか。よろしくね」
「よろしくお願いします」

 僕は、姿勢を正してケリーに挨拶をした。
 僕だってこのラーデイン公爵家の一員だ。客人に無礼があってはならない。
 そう思って、少し気合を入れる。最近、僕はもっと頑張ると決めた。今回も、その頑張り所といえるだろう。

「実は僕、君に会いたかったんだ」
「え? 僕に?」
「うん、ルネリアから、君は僕に似ていると聞いてね。どんな人なのか、一目会っておきたかったんだ」
「そうなんですか……」

 僕がケリーに会ってみたかったのは、そういう理由だった。
 彼女が僕に似た雰囲気をしている。そうルネリアから聞いていたのだ。
 そして、実際に会ってみてそれは間違っていないような気がする。確かに、僕と彼女はどこか似ているような感じがするのだ。

「……失礼かもしれませんが、確かに少し似ているかもしれませんね」
「君もそう思う?」
「ええ、不思議ですね……具体的に言葉で表せと言われたら、少し難しいような気はしますけど、僕達は似ているような気がします」
「やっぱり、そうだよね……」

 ケリーも、僕と同じことを感じ取っていたようだ。
 よくわからないが、僕達は似ている。何が似ているかは、わからないがそう思うのだ。
 ルネリアに聞けば、それがわかるのだろうか。今度聞いてみるのも、いいかもしれない。
< 80 / 135 >

この作品をシェア

pagetop