公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

指摘される動揺(エルーズ視点)

「……なんだか、今日のサガードは少し変だよね?」
「え?」

 そこで、ルネリアがサガード様にそんなことを言った。
 今日の彼は変。それはそうかもしれない。先程から、サガード様はケリーの言葉一つ一つにひどく動揺している。それは、ルネリアから見れば訳がわからないことだろう。

「そ、そんなことはないと思うんだが……」
「そうかなぁ?」

 この場に来てわかったことだが、ルネリアはサガード様からの好意をまったく気づいていないようだ。
 彼女は、少し鈍感な所がある。それはわかっていたことだが、ここまで露骨でも気づかないようだ。
 もっとも、彼女は時々とても鋭くなる。もしかしたら、些細なことがきっかけで、彼の思いを理解するかもしれない。
 それが、今であるという可能性もある。サガード様の変な様子が、彼女にその思いを伝えることになるかもしれないのだ。

「きっと、サガード様は緊張しているんじゃないかな?」
「緊張?」
「ほら、僕とサガード様は初めて会う訳だし……僕だって、平静に見えるかもしれないけど、緊張しているんだよ」
「そうなんだ……」

 そんなルネリアに、ケリーはそのように説明をした。
 どうやら、彼女もこれでサガード様の思いがばれるのは忍びないと思ったようだ。
 そのことに、サガード様は少し安心したような表情になる。ただ、直後に表情がまた変わった。恐らく、恋敵に助けられて複雑な感情なのだろう。

「まあ、そうだよね。ケリーは、美人だし緊張するよね?」
「え?」
「うん? どうかしたの?」
「あっ……」

 そこで、ルネリアはサガード様に声をかけた。
 その言葉に、彼は違和感を覚えたようだ。恐らく、ケリーが美人という部分が気になったのだろう。

「美人……確かに、まあ綺麗な顔をしているとは思う。だから、緊張する……だが、俺に別にそんな趣味はないぞ?」
「……サガード、何を言っているの?」
「いや、そうじゃないのか……」

 サガード様は、とても混乱しているようだ。
 それは、そうだろう。今まで男の子だと思っていた子が、女の子だったと理解するのは、それなりに難しいことであるはずだ。

「ルネリア、一つ聞いてもいいか?」
「何かな?」
「その……ケリーは、お前にとって兄弟みたいだと言っていたよな? それを具体的に言ってもらえないか?」
「具体的に……? えっと……お姉ちゃんみたいということでいいのかな?」
「なるほど……ありがとう、全て理解できた」

 ルネリアの言葉に、サガード様は天井を見上げていた。
 今、彼の中では、様々な感情が渦巻いているだろう。しばらくは、そっとしておいた方がいいかもしれない。
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