公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

さらなる動揺(エルーズ視点)

「……やってくれたな?」
「なんのことでしょうか……?」

 数秒天を仰いだ後、サガード様はケリーの方に目を向けた。それに対して、ケリーは目をそらす。
 当然のことながら、サガード様は彼女がわかっていて何も言わなかったと理解しているだろう。そのことで、彼女を睨みつけているのだ。
 だが、その顔は少し嬉しそうである。恐らく、ケリーが恋敵ではないとわかって、安心しているのだろう。

「……」
「な、なんだよ……」

 それに対して、ケリーは少し考えるような表情になった。
 その後、彼女はゆっくりとサガード様の方に近づいた。その顔は、何かを思いついたというような顔だ。

「僕が女の子だからといって、恋敵にならないとは限りませんよ?」
「な、何……?」

 それから、ケリーはサガード様に小声でそう呟いた。
 それに対して、彼は驚いたような表情になる。どうやら、サガード様はまたも混乱し始めたようだ。
 恐らく、ケリーは冗談でそう言っているのだろう。だが、サガード様としては気が気ではないようだ。それが表情によく表れている。

「サガード、どうしたの?」
「いや、なんでもない……」
「そうなの? なんだか、少し顔色が悪いような気がするんだけど……」
「大丈夫だ。い、色々と混乱しているだけだ」
「それは、大丈夫じゃないんじゃ……」

 ルネリアは、サガード様のことを心配していた。
 それはそうだろう。彼は今、目に見えて混乱している。ケリーの言葉が、余程効いたようだ。

「いや、その……実の所、俺はケリーのことを男の子だと思っていたんだ」
「え? そうなの?」
「ああ、だから、混乱していたんだ……」

 サガード様は、ケリーのことを勘違いをしたことをルネリアに告げた。
 混乱しているのを誤魔化すために、少しだけ真実を話すことにしたようだ。
 それに対して、ルネリアは驚いている。ケリーを女の子だと知っている彼女からすれば、サガード様の勘違いは信じられないものなのだろう。

「どうして、ケリーを男の子だと思ったの?」
「え? いや、男の子みたいな恰好をしているし、口調も男の子みたいじゃないか」
「こんなに綺麗なのに?」
「いや、男でも綺麗な人はいるだろう」
「ああ、確かに………」

 そこで、ルネリアとサガード様が僕の方に目を向けてきた。
 会話の内容からして、僕が綺麗だと思っているということだろうか。
 それに対して、僕は苦笑いを浮かべる。どう反応すればいいかか、わからなかったからだ。

「確かに、エルーズ様は綺麗ですね」
「え? あ、その……ありがとう?」

 ケリーまでそう言ってきたため、僕はとりあずお礼を言っておいた。褒められているのだから、お礼を言うべきだと思ったのだ。
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