公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

聞きたいことは(イルフェア視点)

 キルクス様が帰った後、私は自室にウルスドとエルーズを呼び出していた。彼らと話したいことがあったからである。

「それで、どうして俺達を呼び出したんだよ」
「実はね……ルネリアのことで、話したいことがあるの」
「ルネリアのこと? なんだよ?」

 ウルスドは、私にどうして呼び出されたのか、まったくわかっていないようだ。
 一方で、エルーズはある程度理解しているのか、納得したような顔をしている。
 こういう時、エルーズはとても鋭い。彼のそういう所は、ルネリアとよく似ているかもしれない。

「ルネリアとサガード様のことなんだけど……」
「サガード様……それがどうかしたのか?」

 私が核心に迫ることを言っても、ウルスドはきょとんとしていた。どうやら、彼は事態をまったく理解していないようである。
 ここで、私は人選を間違えたことを悟った。よく考えてみれば、ウルスドも大概鈍いのである。

「姉上、なんでそんな目をするんだ?」
「ウルスド、あなたも大概鈍いわよね……これなら、まだお兄様の方が良かったかしら?」
「おい、なんか俺も兄上も馬鹿にしていないか?」

 基本的に、アルーグお兄様は鈍い。しかも、普段から忙しくしている人なので、今回は呼ばなかったのだ。
 ただ、事情を説明して頼りになる人ではある。ウルスドより彼を呼んだ方が、良かったかもしれない。

「要するに、お姉様はサガード様がルネリアに好意を寄せているということに関して、話したい訳だね?」
「ええ、そうなのよ」
「何?」

 エルーズの言葉に、ウルスドは驚いていた。驚いているということは、彼はサガード様の好意を理解していなかったようだ。
 そのことに、私は驚いていた。あれだけ露骨なのに、気づかないものなのだろうか。それなら、どうしてサガード様がこのラーデイン公爵家に来ると思っていたのだろうか。

「僕も、今日実際に見るまではわからなかったけど、サガード様はルネリアのことが好きみたいだよ」
「そうなのか……」

 どうやら、エルーズも今日その事実を知ったようだ。
 私は、少し頭を抱えてしまう。家の男連中は、どうしてこんなにも鈍いのだろうか。

「ま、まあ、そうなのよ。それで、二人に色々と聞きたいのだけれど……」
「そういうことか……まあ、それなら了解だ」
「僕達が力になれるかはわからないけど、できる限りのことはするよ」
「ええ、ありがとう……」

 二人は、私と話してくれる気になった。鈍い部分はあるが、家の男兄弟は皆優しいのだ。
 それに、私は思わず笑顔になってしまう。本当に、私はいい兄弟に囲まれたものである。
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