公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

彼女の気持ちは(イルフェア視点)

 私は、自室にルネリアを呼び出していた。彼女から、聞きたいことがあったからである。

「お姉様、ルネリアに聞きたいことって、何なの?」

 自室には、ルネリアの他にオルティナがいた。ルネリアを呼び出しに行く時に、偶々廊下で会って、事情を話したら自分も同席したいと言ってきたのである。
 別に隠すようなことではないので、私はオルティナも部屋に招いた。結果的に、姉妹勢揃いとなったのだ。

「実は、ルネリアとサガード様のことについて、少し質問したいのよ」
「え?」
「サガード様? 最近、よく家に来ている王子様だよね? その人が、どうかしたの?」

 私の言葉に、ルネリアは驚いていた。
 その反応で、私は理解する。やはり、彼に何かしらの思いは、あるということだろう。
 一方で、オルティナはきょっとんとしている。サガード様の思いに、彼女は気付いていないようだ。
 なんというか、もしかしたら私達家族は男とか女とか関係なく、皆鈍いのかもしれない。オルティナの反応に、私はそう思うのだった。

「……ルネリアにとって、サガード様は同年代の仲が良い人よね。実際の所、彼に対してどう思っているか、聞いておきたいの」
「どう思っているか、ですか?」
「ええ……こういうことは、あまり言いたくはないけれど、私達は貴族なの。だから、そういう所はきちんとしておかなければならないわ。という訳で、ルネリアに聞いてみたいの」

 私は、ルネリアにそのように切り出した。
 彼女は、その質問に対して黙ってしまう。その微妙な表情は、まだあまりよくわかっていないといった所だろうか。
 エルーズの話を聞いて、早めに動いた方がいいと思ったが、もしかしたら失敗だったかもしれない。
 ルネリアが、自分の気持ちを自覚していない可能性もある。手を打つなら早い方がいいと思っていたが、私の方の気持ちが先走り過ぎていたかもしれない。

「あの……せっかくですから、お姉様に聞いてみたいんですけど、お姉様はキルクス様のことが好きですか?」
「……え?」

 そこで、ルネリアから質問が飛んできた。
 それが思ってもいなかった質問であったため、私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

「私……サガードのことをどう思っているか、自分でもよくわからないんです。だから、お姉様に聞いてみたいんです。もしもお姉様がキルクス様のことが好きなら、それはどういう感情なのかということを……」
「え、えっと……」

 ルネリアは、恐る恐るという感じで私にそう説明してきた。
 その説明で、私は理解する。彼女が、どういう意図であるかということを。
 要するに、彼女は好意というものがどういうものかを知りたいのだろう。自分の今抱いている思いが好意なのかどうかわからないため、それを確かめたいのだ。
 そんなことを聞く時点で、それはもう好意を抱いているということなのではないだろうか。そう思いながらも、私はルネリアの質問にどう答えるべきかを考えるのだった。
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