公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

相談するなら

 私の悩みというものは、考えてみればとても根深いものなのかもしれない。
 なぜなら、お母さんがどうして私のことを大切にしてくれていたかなんて、私にはわからないからだ。
 それは、自分自身にも当てはまることである。どうして、私は皆のことが好きなのか。そう聞かれると、私も答えは出て来ないのだ。

「……こういう時、一人で悩んでもろくなことにはならないんだよね」

 そんな風に悩んでいても無駄だということは、わかっている。誰かに相談するべきだろう。
 今までは、目をそらしてきた。だが、そろそろこの悩みには答えを出すべきなのだろう。今朝起きてまたそのことについて考えてしまったので、私はそう思うようになっていたのだ。
 という訳で、私はとある人の部屋の前まで来ている。こういう時に相談できる人は、多分この人だろう。

「失礼します」
「あら? ルネリア?」
「イルフェアお姉様、少し相談したいことがあるんですけど……」
「そうなの? とりあえず、入ってちょうだい」

 私は、イルフェアお姉様に相談することにした。
 彼女は、とても大人である。そんな彼女なら、私のこの悩みの答えを教えてくれると思うのだ。

「お邪魔します」
「ええ、いらっしゃい。そこに座って」
「は、はい……」

 私は、イルフェアお姉様と机を挟んで座る。
 そこで、私は少し言葉に詰まってしまう。どうやって切り出していいかわからなかったからだ。
 そんな私の言葉を、イルフィアお姉様は待ってくれている。その心遣いが、とてもありがたい。
 イルフェアお姉様は、とても落ち着いている。これが、大人の余裕というものなのだろうか。

「実は……オルティナお姉様のことで、相談があるんです」
「……あら?」

 私の言葉に、イルフェアお姉様は少し面食らったような顔をしていた。
 どうやら、私のこの相談というのは、彼女にとって予想外のものだったようだ。

「オルティナのことなのね……私、てっきりサガード様のことかと思ったわ」
「サガード……あっ」

 イルフェアお姉様の言葉に、私は気付いた。
 そういえば、私は先日彼女に呼び出されて、そのことについて色々と話し合った。その流れから考えると、確かに相談というのはそのことであるというのが自然なような気がする。

「ええっと……サガードのことは、まだ考え中です」
「そうなのね……」

 サガードのことも、私が悩んでいることの一つだ。それは未だに答えが出ていない。
 ただ、今日来たのはそのことではないのである。もっと別のことなのだ。
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