公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

剣術の稽古

 私は、アルーグお兄様とウルスドお兄様の剣術の稽古を見学することにした。
 二人は、いつも裏庭で稽古を行っているらしい。人目のないこの場所は、二人にとっては都合がいい場所だそうだ。

「踏み込みが甘い!」
「うわあっ!」

 アルーグお兄様の指導は、本当に厳しかった。ウルスドお兄様の攻撃を軽く受け流し、容赦なく反撃しているのだ。
 それに対して、ウルスドお兄様は膝をつく。どうやら、その一撃がかなり効いているようだ。

「……どうした? その程度か?」
「くっ……」

 アルーグお兄様は、そんな彼に対して剣を向けた。
 あれは訓練用の剣であるらしい。だが、それでも叩かれたら相当痛いだろう。あれで痛めつけられるのは、勘弁してもらいたいものだ。
 恐らく、ウルスドお兄様だってそう思っているだろう。だからこそ、中々立ち上がれないのではないだろうか。

「ウルスドお兄様、頑張ってください!」
「ルネリア……」

 私は、そんなウルスドお兄様を応援した。
 私の応援にどこまで効果があるかはわからない。それでも、この声が彼を奮い立たせてくれると信じて声を出すことしか、私にできることはないのだ。

「……妹の前で、みっともない所は見せられないだろう?」
「ああ……」

 ウルスドお兄様は、立ち上がってくれた。
 その目は、今までとは違う。何か決意のようなものが宿っている。

「うおおっ!」
「ほう……」

 ウルスドお兄様は、再びアルーグお兄様に向かって行った。
 だが、その剣は呆気なく受け止められる。やはり、技量に関してはかなりの差があるようだ。

「……いい気迫だ。その意気で来い」
「……もちろん、そのつもりだ」

 二人の剣が、激しく交じり合う。それは、私の目では追いきれない動きだ。

「おらあっ!」
「ふんっ……」

 ウルスドお兄様の必死の攻撃を、アルーグお兄様は全て受け止めている。それがわかって、私はあることに気がついた。
 それは先程から、アルーグお兄様が攻撃していないことだ。彼は防御に徹している。それはまるで、何かを待っているかのようだ。

「くっ……!」
「ここまでか?」
「うわああっ!」

 ウルスドお兄様の攻撃が緩まった刹那、アルーグお兄様の攻撃が始まった。
 その一撃を受け止めきれず、ウルスドお兄様は膝をついてしまう。かなり気迫に溢れていたが、結局彼の攻撃は届かなかったのである。
 そんなウルスドお兄様に、アルーグお兄様は剣の切っ先を向けた。だが、その表情は先程と比べて明るい。どうやら、今回の攻撃は彼にとってある程度評価できることだったようだ。
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