公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

さらなる見学者

「先程の気迫は、中々のものだったぞ」
「……それでも、兄上には遠く及ばないようだな?」
「あまり舐めてもらっては困る」
「そうだよな……」

 アルーグお兄様は、剣を鞘に収めてウルスドお兄様に手を伸ばした。
 その手をゆっくりと取りながら、ウルスドお兄様は立ち上がる。その顔は、悔しそうだが晴れやかだ。

「ルネリア、ありがとうな。お前の声援のおかげで、なんとか自分を奮い立たせられたぜ」
「そうですか? それなら、良かったです」

 そんなウルスドお兄様は、私に声をかけてくれた。
 どうやら、私の声援には効果があったようだ。それなら、何よりである。

「まあ、俺も流石に妹の前でみっともない姿は見せられないからな……」
「ふん、その心意気を普段から見せられれば、もっと良かったのだがな……」
「うっ……」

 ウルスドお兄様の言葉に、アルーグお兄様は笑みを浮かべながら、そんなことを言った。
 確かに、先程のような気迫を普段から見せることができていれば、もっと良かったのは事実である。
 だが、誰かの声援というものが力になるというのも、また事実であるだろう。
 ウルスドお兄様は、そういう声援を力に変えられる人なのだ。それでやる気を出せるのだから、私は充分すごいと思う。

「……失礼してもいいかな?」
「え?」
「うん?」
「むっ……」

 そんなことを考えていると、声が聞こえてきた。
 それは、エルーズお兄様の声である。そう思って声が聞こえてきた方向を向くと、確かに彼がいた。

「エルーズお兄様? どうかされたのですか?」
「皆が裏庭に行くのを見て、どうしたのかと思って……」
「ああ、そういうことか……実はさ、兄上に剣の稽古をつけてもらっていたんだ」
「私は、その見学です」
「そうだったんだ……」

 どうやら、エルーズお兄様は私達が裏庭に行くのを見ていたようだ。
 それで気になって、見に来たということだろう。それなら、大体私と同じである。

「よかったら、お前も見学していくか?」
「え? いいの?」
「ああ、ウルスド、構わないな?」
「ま、まあ、別にいいが……なんというか、益々みっともない所が見せられなくなったな」
「それなら、僕も見学させてもらおうかな……」

 エルーズお兄様も、この稽古を見学するようだ。
 それに、ウルスドお兄様はプレッシャーを感じている。だが、そのプレッシャーをきっと彼は力に変えてくれるだろう。

「ふっ……みっともない所を見せられないのは、俺も同じなんだがな」
「兄上? そうなのか?」
「さてな……」

 そんなウルスドお兄様に、アルーグお兄様はそんな言葉を呟いた。
 どうやら、彼も私達の目があることによって多少は緊張しているようだ。
 それをまったく見せないのは、流石アルーグお兄様といった所だろうか。
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