金髪くんの一途な愛


電話を切り、すぐに店に向かう。

今は、とにかく頭を真っ白にしたくて、

そんなに急がなくても間に合うのに、駅まで全力で走った。







店の近くまできて時計を確認する。

まだ少し早かったけど、開店準備を手伝えって言われたから早くてもいいかと、お店に入ろうとした。

裏口の方にまわろうとした時

お店の前を通り過ぎていった人が、なにか栞のようなものを落とした。

が、その人は落としたことに気付いてなくて。


「あの、
落としましたよ」


その男性を追いかけると

男性が振り返り、びっくりした顔で俺の顔を見た。


「……あの?」

「き、金髪…」

「あー…すいません」


見た目のせいで、絡まれたくなかったのか。

…心配しなくても、落とし物渡したら絡みませんよ。


「あ、いや!見た目に文句があるわけじゃなくてね!?
ちょっと衝撃だっただけさ。
……あ!落としたの拾ってくれたんだね、ありがとう」


……俺、日菜のこと考えすぎなのかな。

ニコッと笑ったその男性の笑顔が、さっき去り際に笑った日菜の顔と、似ている……ような気がした。


< 162 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop