君の隣で歌いたい。
「なあリンカ」
「うん?」
「進路とか考えてる?」
その言葉に一気に現実に引き戻される。私たちは来年受験生だ。
沢里の質問は突然だけれど当然で、そろそろ将来のことを考え始めなければならない時期なのだ。
当初の家の方針に従って進学するか。
柾輝くんのように音楽の道に進むか。
未来への道が複雑に絡み合って、見通せない。
「んー……。歌いたい気持ちもあるし、作曲をちゃんと学びたい気持ちもあるんだよね」
「リンカの曲作りはほぼ独学だもんな。そこがいい味出してるけど」
「その味がこれからも通用するかどうか、分からないからね」
私はうんうん唸ってから、ひとつだけ確かなことを沢里に伝えることにした。
「私はこれからもずっと、死ぬまで沢里と歌っていたいなあ」
沢里の質問の答えにはならないだろうけれど。
自分の口からこんな言葉が出るようになるなんて。半年前まで考えられなかった。
私という人間をすっかり沢里に変えられてしまった自覚がある。