君の隣で歌いたい。
「バンドやってるの?」
「いえ、ギターは練習してるだけっす。弾くのが好きなんで。」
「そうなんだねえ。いや実は、僕好きなバンドがいてね、仕事帰りにライブに行ったりするんだ」
「え!?」
義父の意外な趣味に思わず串を取り落す。家で音楽を聴いている姿は見たことがない。
なのに仕事帰りにライブに行くなんてかなり熱狂的ではないか。
そんな素振りは全く見られなかったのに。そう思ってからふと気付く。
――いや、私が知ろうとしなかったのだ。義父の趣味のことなど、気にも留めていなかった。
衝撃を受ける私をよそに義父は続ける。
「幼馴染の息子がやってるバンドでね……もうすぐメジャーデビューかなんて言われてる。向こうは僕と父親の関係なんて知らないだろうけど、結構古参ファンだから顔は覚えていてくれてるみたいで」
「へえ、嬉しいですよねそういうの」
沢里の相槌に義父はにこにこ頷く。