日給10万の結婚
「あの、プレゼントとかよく分からないんですよ。私ブランドも疎いし……何かありませんか?」
『ううん、別にそんなこだわらなくても、何でも喜ぶと思いますけどねー……じゃあ、今度二人で見に行きます?』
「いいんですか!」
自分の声が弾む。一緒に選んでもらえるとなれば、こんな心強いことはない。せっかく買ったのに、ダサいとか貧乏人の目線だとか、そんな憎たらしいことを言われたら嫌だもん。ハズレはないだろうから、圭吾さんに見立ててもらうのが一番だ。
『土曜、外に出られますか?』
「久しぶりに友達に会いたいって、玲に相談してみます! 一日くらいなら、あの鬼も許してくれるでしょ」
『はは、鬼。じゃあ、楽しみにしてますね』
そう会話を交わし、圭吾さんとの電話が切れた。私はほっと息をつく。
さて、土曜に外出許可を得なくては。日給10万貰ってるのに、外出させてもらえるなんて、本当にいい仕事だなと思った。
あとはケーキと食事と……考えることは山積みである。
夜、畑山さんのレッスンも終わり、いつも通り帰宅した玲たちと三人で食事を取った。その後片付けをしている時、私は早速玲に外出の許可を得ようと話しかけた。
「ねえ、玲」
「なに」
ダイニングテーブルに座り、水を飲んでいる玲がこちらを振り返る。私はゴミを捨てながら、自然を装って彼に尋ねた。
「今週の土曜日、ちょっと出かけてもいいかな?」
「いいけど、どこ行くんだ? 弟には先週会ったんだろ」
「あ、うん、友達とどうしても久しぶりに会いたくて……」
少し小さな声になってしまう。ちらりと横目で圭吾さんを見た。彼はテーブルの上を拭きつつ、私の方を見てにこりと笑ってくれる。玲に隠れて彼の誕生日プレゼントを買うというのが、何だか恥ずかしくなり、私は俯いた。
玲はゆっくりグラスを置く。そして小さく頷いた。
「ふーん……ま、いいけど」
「あ、レッスンは前日頑張って、外出分取り戻します!」
「いや、程よい息抜きは効率を上げるから気にしなくていい。どこでも行ってくれば」
そう短く言った玲は、すっと立ち上がってリビングを出て行ってしまった。お風呂にでも行ったのだろうか? どこでも行ってくればって、相変わらず言葉の使い方が悪い。先週も勇太に会うために出かけたばかりだから、やっぱり外出しすぎただろうか? それにどう見ても、機嫌を損ねたように見える。
いなくなった背を見送りつつ、私は頭を掻いた。日給10万貰ってる立場のくせに、出かけすぎって思われたかなあ。
困っていると、近くにいた圭吾さんが小さく笑った。
「はは、分かりやすい人ですね」
「怒らせちゃいましたかね。やっぱり出かけすぎかな、お金貰ってる身なのに」
心配して言うと、彼は首を振った。
「大丈夫、玲さんがご機嫌斜めなのはそれが原因じゃないと思うので」
「え?」
「まあ、放っておけばいいですよ。気にしなくても、絶対にすぐ機嫌治るから大丈夫です」
圭吾さんはそうきっぱり言い切ると、今日の仕事は終わりとばかりに伸びをした。まあ、今は玲の機嫌が悪くても、自分の誕生日のために外出したんだと知れば、きっと大丈夫ということだろう。
私は納得し、それ以上追及しなかった。
『ううん、別にそんなこだわらなくても、何でも喜ぶと思いますけどねー……じゃあ、今度二人で見に行きます?』
「いいんですか!」
自分の声が弾む。一緒に選んでもらえるとなれば、こんな心強いことはない。せっかく買ったのに、ダサいとか貧乏人の目線だとか、そんな憎たらしいことを言われたら嫌だもん。ハズレはないだろうから、圭吾さんに見立ててもらうのが一番だ。
『土曜、外に出られますか?』
「久しぶりに友達に会いたいって、玲に相談してみます! 一日くらいなら、あの鬼も許してくれるでしょ」
『はは、鬼。じゃあ、楽しみにしてますね』
そう会話を交わし、圭吾さんとの電話が切れた。私はほっと息をつく。
さて、土曜に外出許可を得なくては。日給10万貰ってるのに、外出させてもらえるなんて、本当にいい仕事だなと思った。
あとはケーキと食事と……考えることは山積みである。
夜、畑山さんのレッスンも終わり、いつも通り帰宅した玲たちと三人で食事を取った。その後片付けをしている時、私は早速玲に外出の許可を得ようと話しかけた。
「ねえ、玲」
「なに」
ダイニングテーブルに座り、水を飲んでいる玲がこちらを振り返る。私はゴミを捨てながら、自然を装って彼に尋ねた。
「今週の土曜日、ちょっと出かけてもいいかな?」
「いいけど、どこ行くんだ? 弟には先週会ったんだろ」
「あ、うん、友達とどうしても久しぶりに会いたくて……」
少し小さな声になってしまう。ちらりと横目で圭吾さんを見た。彼はテーブルの上を拭きつつ、私の方を見てにこりと笑ってくれる。玲に隠れて彼の誕生日プレゼントを買うというのが、何だか恥ずかしくなり、私は俯いた。
玲はゆっくりグラスを置く。そして小さく頷いた。
「ふーん……ま、いいけど」
「あ、レッスンは前日頑張って、外出分取り戻します!」
「いや、程よい息抜きは効率を上げるから気にしなくていい。どこでも行ってくれば」
そう短く言った玲は、すっと立ち上がってリビングを出て行ってしまった。お風呂にでも行ったのだろうか? どこでも行ってくればって、相変わらず言葉の使い方が悪い。先週も勇太に会うために出かけたばかりだから、やっぱり外出しすぎただろうか? それにどう見ても、機嫌を損ねたように見える。
いなくなった背を見送りつつ、私は頭を掻いた。日給10万貰ってる立場のくせに、出かけすぎって思われたかなあ。
困っていると、近くにいた圭吾さんが小さく笑った。
「はは、分かりやすい人ですね」
「怒らせちゃいましたかね。やっぱり出かけすぎかな、お金貰ってる身なのに」
心配して言うと、彼は首を振った。
「大丈夫、玲さんがご機嫌斜めなのはそれが原因じゃないと思うので」
「え?」
「まあ、放っておけばいいですよ。気にしなくても、絶対にすぐ機嫌治るから大丈夫です」
圭吾さんはそうきっぱり言い切ると、今日の仕事は終わりとばかりに伸びをした。まあ、今は玲の機嫌が悪くても、自分の誕生日のために外出したんだと知れば、きっと大丈夫ということだろう。
私は納得し、それ以上追及しなかった。