夫婦ごっこ
第六章 偽りのない想いを
「奈央さん、こっち来ないの?」
奈央と義昭は今、向かい合って座っている。各々の前にはパズル雑誌があり、二人して黙々と解いていた。普段であれば奈央から義昭の隣に座りにいくが、今はそれができなかった。
「うん……今日はここで集中してやろうかな」
「そっか。わかった」
慶子の前で苦しそうな表情を浮かべた義昭を見て以来、奈央は義昭のそばに行くのが怖くなってしまった。義昭はいつだって奈央を受け止めて優しくしてくれるが、それは奈央に下心がないと思っているからだ。
もしも義昭に恋心を抱いていると知られてしまったなら、またあのときみたいな表情をさせてしまうかもしれない。もうそばにはいさせてもらえないかもしれない。拒絶されてしまうかもしれない。そう思うと怖くて近づけなくなった。
夜もずっと自分のベッドで一人で眠っている。会話はできるだけ普通にするように心掛けているし、普段の生活態度も変えてはいない。ただ、明らかに二人の距離感は変わってしまった。いや、奈央が変えた。今は結婚当初くらいの距離感で過ごしている。
表面上は普通の家族に見えるように過ごしているが、奈央が変わってしまったことにきっと義昭は気づいているだろう。それでも奈央はもう義昭に以前のように甘えることはできなくなっていた。報われない片想いだとはっきりと自覚させられては、もう素直に甘えることなんてできなかった。
奈央と義昭は今、向かい合って座っている。各々の前にはパズル雑誌があり、二人して黙々と解いていた。普段であれば奈央から義昭の隣に座りにいくが、今はそれができなかった。
「うん……今日はここで集中してやろうかな」
「そっか。わかった」
慶子の前で苦しそうな表情を浮かべた義昭を見て以来、奈央は義昭のそばに行くのが怖くなってしまった。義昭はいつだって奈央を受け止めて優しくしてくれるが、それは奈央に下心がないと思っているからだ。
もしも義昭に恋心を抱いていると知られてしまったなら、またあのときみたいな表情をさせてしまうかもしれない。もうそばにはいさせてもらえないかもしれない。拒絶されてしまうかもしれない。そう思うと怖くて近づけなくなった。
夜もずっと自分のベッドで一人で眠っている。会話はできるだけ普通にするように心掛けているし、普段の生活態度も変えてはいない。ただ、明らかに二人の距離感は変わってしまった。いや、奈央が変えた。今は結婚当初くらいの距離感で過ごしている。
表面上は普通の家族に見えるように過ごしているが、奈央が変わってしまったことにきっと義昭は気づいているだろう。それでも奈央はもう義昭に以前のように甘えることはできなくなっていた。報われない片想いだとはっきりと自覚させられては、もう素直に甘えることなんてできなかった。