夫婦ごっこ
「私も。義昭さんといるとついつい気が緩んじゃう」
「いいね。気が緩んだ奈央さんかわいいから役得だな」
「ふふ、何それ」
「奈央さんはそのままでいいってことですよ。ほら、奈央さんも、ごろんって寝転んでごらん。気持ちいいよ」

 促されるままに奈央もベッドに寝転んだ。ふかふかのベッドがとても気持ちいい。体がそのまま沈み込んでいってしまいそうな気がする。目をつむってその感覚を楽しんでいれば、疲労も相まって眠気が襲ってくる。

「ねぇ、これ寝ちゃいそうなんだけど」
「そうだね……僕ももう寝てしまいそうです」

 ふと隣を見てみれば、義昭はしっかりと目を閉じて寝転んでいる。本格的に寝ようとしているのかもしれない。

「え、ちょっと、義昭さん。そのまま寝たらダメだよ」
「……ふー、仕方ないですね」

 義昭はぼそりとつぶやくといきなり起き上がり、奈央の手も引っ張ってベッドの脇に立たせた。

< 45 / 174 >

この作品をシェア

pagetop