私があなたの隣にいけるまで、もうあと少し

 一日目はクラスでの世界遺産巡りだった。

 もちろん沖縄の文化的で素敵な城跡も堪能したけれど、他クラスが移動しているのを見ると、もしかしたら彼がいるかもしれない、とやたら挙動不審にきょろきょろと辺りを見回してしまった。残念ながら、彼の姿はなかったけれど。

 ようやく今日から三日間お世話になるホテルに到着する頃には、歩き疲れてへとへとだった。早くシャワーを浴びて、ベットに横になりたい。明日もまだまだ沖縄を堪能する予定がびっちりだ。

 しかしその前に夕ご飯がある!全クラスが一堂に会するホテルのバイキングである。

 ご飯のメニューなんてなんだっていいけれど、彼を見られるチャンスかもしれない。

 動きたくないとばかりに重すぎる足を必死に動かしながら、私は一階の食堂へと降りた。

 
 大きな食堂に入ると、食欲をそそるいい匂いがして、疲れすぎて忘れかけていた食欲が一気に湧いてきた。
 
 和食洋食お好きなものを、といった感じで好きなものを選び放題だった。

 食堂は一学年がみんな入っても余裕なくらい大きかった。三百人が一度に食事を取れるのだからものすごい広さだ。

 私は和食中心に食事を選び、友人達と適当な席に座った。

 行儀が悪いかな、とは思いつつも、食べながら辺りを見回してしまう。

「好きな人でも探してるの?」と友人に言われ、私は咄嗟に「ち、違うよ!」と言ってしまった。違わないのに。


 各部屋にシャワー室は付いていたけれど、せっかくなので大浴場でゆっくりと温かいお湯に浸かった。ホテルで過ごす時間は、私服でも可ということで私はラフにTシャツに可愛めのスウェットに着替えた。

 彼の私服はどんなだろうか。夜はパジャマに着替えるのかな、スウェットで楽に寝るのかな。

 そんな想像をして部屋へ向かって廊下を歩いていたけれど、やっぱり彼と擦れ違うことはなかった。


 私はA組、彼は何組なのだろうか。全然会えないから、G組とかH組とか端と端のクラスなのかもしれない。


 修学旅行は、何もかもが日常とは違っていてとても楽しい。でもやっぱり、少し物足りなかった。

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