熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
父の返事に私は「あれ?」と憤りを霧散させた。
成輔と結婚させて、家元を継がせようって話じゃなかったの? じゃあ、私はここに振袖姿でいる理由は何?
すると父が成輔を見た。

「成輔くん、本当に葵でいいですか。葵は自分の興味や探求心ばかりに貪欲な子です。いくつも会社を経営しているきみのような青年実業家を内助の功で支えられる娘ではありませんよ」

成輔は私の両親に向かって、好青年そのものといった笑顔を見せる。

「自立し、自分というものをしっかりを持っている葵ちゃんだからいいんです。昔から、僕が結婚したいと見つめてきたのは葵ちゃんですから」

そう言って、成輔は私を見た。愛のこもった眼差しは、おそらくこの場に相応しいもの。
私がこのパフォーマンスに合わせて頬でも染めて照れて見せれば、親たちは大喜び。あっという間に結納や結婚式の段取りにまで話が進むのだ。

「葵は異存ないわよねえ。成輔さんは初恋の人だもの」

母の余計なひと言に、心がざわざわする。確かに成輔を好きだと思ったことはあるけれど、それは小学生のときだ。そして、現在の私は成輔のことが苦手である。

「ええと」

風尾社長と両親が固唾を呑んで私の返答を待っている。
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