熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「葵は昔から成輔くんが大好きだから、照れてツンツンしてしまうでしょう。今日も内緒にしていないと逃げ出してしまうかと思いましてね」

父はしれっとそんなことを言うが、私が成輔を大好きだと言ったことが、過去に一度でもあっただろうか。苦手だとは口にしてきたし、会食で会っても距離を取っていた。
それが「照れてツンツン」に該当するのだとしたら、父の目は節穴どころの騒ぎではない。

父は母と結託して、私と成輔と結婚させたいのだ。そして、なんとしても院田流の跡目にしたいのだ。
長女の私が家業を捨て、農作物肥料メーカーの研究員をしているのが面白くないのだ。
百合の方が、私の何倍も才能があるというのに……。華道家として立派に父を支え、流派を盛り立てている可憐な妹の顔が浮かび、憤りに震えそうになる。

「葵ちゃんは京都の大学の修士課程を終えて、四月に就職したばかりでしょう。理系女子って格好いいね。しかも華道の家柄で、肥料メーカーだなんて面白い。着眼点が違うなあ」

風尾社長が言い、父がふうと息をつく。

「私としましては、下の娘とふたりで院田流を盛り上げていってほしかったのですがね。家元は次女の百合が継ぐことになりそうです」
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