熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
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「お休みの日なのにごめんね」
「いいよ。暇だし」

今日は百合の手伝いで、ホテル静生荘のフロントに大きな生け込みを作っている。規模の大きな作品になるので、私も百合もジーンズ姿だ。着物を着て正座し、粛々と花と向き合うのが生け花のイメージだけど、院田流華道にはこうした作業のシーンも多い。
私が暇なのは本当だ。家にいても成輔に作ってもらったお菓子を食べてだらけるくらい。今週はその成輔も仕事である。

「おや、院田先生のところの美人姉妹じゃないか」

無遠慮な声が聞こえ振り向くと、見覚えのある男性がいた。でっぷりと太り、薄くなった頭を七三分けにしている。かなり垂れ目だ。

「大山田専務、ご無沙汰しております」

百合が手を止め、頭を下げる。私もならって頭を下げた。
思い出した。父の知り合いの製薬会社の重役だ。高校時代にパーティーで顔を見たことがある。百合はいまだにそういった場で顔を合わせるのかもしれない。

「相変わらず百合さんは美人さんだね。ジーンズに軍手でも、これはなかなか」

そう言って大山田専務は百合の頭のてっぺんから足元までをじろじろと見回す。垂れた目がさらに下がり、品定めとしか思えないねちっこい視線が不快だ。うちの妹が汚れる。
私はずいっと百合の前に出た。
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