姐さんって、呼ばないで

「小春、クリスマスはどっか行くの?」
「どっかって、どこ?」
「え?」
「……え??」

お弁当のタコさんウインナーをパクっと頬張り、首を傾げる。

「仁さんとデートの約束してないの?」
「……ん、たぶんしてない」

ここのところ凄く忙しそうで、簡単なメールのやり取りはあるものの、デートの約束だなんてしてない。
毎日学校で会えてるから、それで満足してしまっていた。

「仕事が忙しそうだし、きっと年末年始も忙しいと思う」
「……まぁ、若頭だからね~、組の仕事は大事だよね」

去年は記憶を失くしていて、当然クリスマスも年末年始も彼とは会ってない。
だけど、何となく分かる。
あの事故がなくても、たぶん彼とは会ってなかったんじゃないかな。
というよりも、彼と別れるみたいな選択をして、たぶん距離を取っていたはず。

「イヴの日が終業式なんだから、夜にでもちょこっと会えばいんじゃない?忙しそうなら、泊まりに行くとか。小春なら泊まりに行けば、問題ないでしょ」
「……その手もあったね」

冬場は風邪やインフルが流行ってて、親の病院は毎年てんてこ舞いだ。
だから、自宅でパーティーらしいものをした記憶がない。
その両親の代わりに、毎年のように彼のご両親や組の人が、私が寂しくないようにしてくれていた。

「ママに頼んでみる」
「じゃあ、私とのクリスマスデートは、終業式の日の帰りでいいからね~♪」
「ハイハイ、クリスマスイヴにデートね」
「やったぁー!!早速、仁さんに自慢しよ」
「へっ?!」

詠ちゃんは速攻でスマホで入力し始めた。

「見てる見てる」
「……」

じろっと物凄い速さで彼の視線が詠ちゃんに向けられたのは言うまでもない。

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