姐さんって、呼ばないで
クリスマスデート、初めての人

十二月中旬、昼休み。
二学期の期末考査の結果も返って来て、あっという間に今年も残すところ、あと半月。

仁くんは相変わらず、組の仕事が忙しいみたい。
不動産や建築の仕事というより、年末年始は『桐生組』としての約束事がたくさんあるらしい。

昔はパパさん(昔から仁くんパパをこう呼んでいた)が、他の組の人が挨拶に来たら、その相手をしていたけれど。
今はそれが、彼のお役目らしい。

未だに桐生組のやり方に異を唱える組があるのも事実で、結構この挨拶の儀自体も危険だと組の人から教わった。
だから、学校で会えるのが本当に有難い。

怪我もなく、ただ無事な姿を見れるだけで。

「ラストの二個~~っ!誰だか知んねぇけど、取りにこーいっ!」
「うぉっ!!マジですっげぇ!今日で全制覇っすか?!」
「……のはずだが、漏れてる奴いたら遠慮なく言えよ~?」

球技大会での約束通り、彼は毎日のように南校舎の購買に通い、伝説のバナナプリンを入手してくれている。
結局、『クラス全員にプレゼントしてやる』と祝勝会の際に発したことで、翌週からこうして昼休みに窓から飛び降りるという荒技でゲットできているんだけど。

そのお陰でしょっちゅう担任の最上先生にお説教されているのも事実。
他の生徒が真似して大怪我でもしたら大変だからと。
……いや、誰も真似したりしないでしょ。
プリン欲しさに死にたくはないはず。

二階といっても、下に衝撃緩和材が敷かれているわけでもなく。
彼らだからできることであって、普通の人間ではありえないから。

クラス委員長の染野くんがチェックリストを作成してくれていて、鉄さんがプリンを手に彼の元へ。

「あ、ありがとうございます。大事に頂きます」
「お前、自分を後回しにしてたんだな」
「……クラス委員なので、当然のことです」
「漢気あんじゃねぇかっ!」
「や、止めて下さいっっ」

鉄さんが染野くんの頭をわしゃわしゃと掻き撫でた。

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