姐さんって、呼ばないで
「母さんから何貰ったんだ?」
「何だろ?」
ジャンケンで勝ち抜いたご褒美の箱。
ラッピングされていて、まだ中を見てない。
「あっ、キーリングだ。しかも、ブランドもの」
「よかったじゃん」
組のイベントは年に数回あり、パパさんとママさんはいつもスポンサー役。
日頃の労いも込めて、ここぞとばかりに奮発してくれる。
「ッ?!……何?」
突然、手を握られた。
二人きりだからラブラブモードにでもなったのかな。
「……え」
「おっ、ぴったり。さすが、俺」
「……っっ」
スッと手が持ち上がり、小指に可愛らしい指輪が嵌められた。
「ぁりがとっ」
「ど~いたしまして」
貰えるとは思ってなかった。
忙しそうだったし、『欲しい物あるか?』といつもなら聞いて来るのに、聞かれなかったから。
「私からも…」
一昨日詠ちゃんとデートした際に買ったもの。
「おぉっ、ピアス!」
「学校にしてっちゃダメだよ?没収されるから」
「分かってるって」
黒いリングのピアス。
シルバーやゴールドのリングピアスはよく見るけれど、黒っぽいのはキャッチタイプのしか見たこと無かったから。
「着けて」
「私が?」
「ん」
「……緊張する」
「今さらだろ」
これまでも着けてあげたことは何度かあるけれど、久しぶりすぎて指が震える。
柔らかい耳朶。
サラサラな髪。
「ないよ」
「……え?」
「ゼロ」
「…何が?」
「昼間の質問」
「………ッ?!」
「十年くらい前から許婚なんだから、相手が小春じゃなかったらマジで問題だろ」
「っ……」
「俺、そんな節操ない男に見えんのか?」
「そういうわけじゃ……」
「正式に結納したら、お相手頼むな」
「なっ…」
クスっと笑った彼は、『お前に言ってんだぞ』とポンポンと頭を撫でた。