姐さんって、呼ばないで


食べ終わった班から後片付けを始め、昼休みに入る頃には小春の班は教室に戻っていた。

「じゃあ、委員会に行って来るね」
「いってらっしゃい」

選挙管理委員会の仕事がある詠は、小春を教室に残し、委員会の仕事へと向かって行った。

「なんか暇だねぇ~。でも、たまにはこういうまったり感もいいよね~」
「うん」

調理実習で同じ班になった菊川(きくかわ) 美路(みち)が机に突っ伏す。

小春の班は、調理しながら片付けを同時進行でしていたため、片付けが早く終わったのだ。
他の班の子達がまだ戻って来ない教室は意外と静かで、ちょっぴり贅沢な雰囲気を味わう。

「小春~」
「…はい」
「今から鉄と、ブツ仕入れて来るから」
「……へ?」
「他の奴らが帰って来ても、ナンパされんじゃねーぞ?」
「兄貴、ここは学校なんで、ナンパじゃなくて告白っす」
「ぁあ゛?あーどっちでも同じだろ。とにかく、他の男にホイホイついてくなよ?」
「……はい」
「桐生さん、大丈夫ですよっ。私が見張っとくので」
「おっ、サンキュ」
「じゃあ、姐さん、行って来やす」
「いってらっしゃい」

仁と鉄が教室を颯爽と出ていく。
そんな二人を見つめ、美路が楽しそうに口を開いた。

「桐生さんって、本当に小春ちゃんのことが好きなんだね」
「え?」
「あんなに堂々と態度に示す人、そうそういないよ?」
「……っ」
「『極道』の人って聞いてたから、もっと強引でヤバい人なのかと思ってたけど、優しいしさ、凄く魅力的な人だよね」

美路はペットボトルのお茶を口に含み、にこっと微笑む。

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