姐さんって、呼ばないで
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「もう四日も休んでるよ?二人して休んでるけど、噂通りに体調が悪いわけじゃないんでしょ?」
「…うん、たぶん」

お昼休みの教室で、詠ちゃんとお弁当を食べている。
鉄さんからのメールの後、仁さんからもメールが来た。
『決算月で忙しいから後でノート写させて』と、業務連絡のような簡素なものが送られて来た。

普段は私からメールなんてしないんだけど、さすがにちょっと心配になる。

『抗争で怪我したらしいよ』『入学式も大怪我で来れなかったし、今回も似た感じなんじゃない?』といった感じの噂が飛び交う。
火のない所に煙は立たぬと言うけれど、『極道』という現実と『入学式欠席』という事実が彼らの噂を助長させている。


仁さんだけでなく、鉄さんも勉強はできるらしく、中間試験の順位は学年7位。
わざわざ入学してくるくらいだから、勉強は問題ないのだと思うけれど。

試験自体を受けなかったら、幾ら勉強ができても成績にカウントされない。
このままずっと休みが続いたら出席日数が危なくなるのでは?と心配になる。

少し前まで存在すら知らなかったような彼らが、今は本当に気になってしまう。

「後でメール入れてみる」
「仁さんたちいないと、何だか教室内が静かだしさ、なんかもういて当たり前になってるよね」
「そうだね」

詠ちゃんの言う通りだ。
存在感のある彼らがいないというだけで、蝋燭の炎が消えたような寂しさがある。

それに、『小春』と毎日呼ばれていたから、心にぽっかり穴が空いたような切なさがある。

私が事故で記憶を失ったことで、彼もこんなふうに切なく寂しさを募らせていたのかな。

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