姐さんって、呼ばないで
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都内某所にある、金田組が仕切る消費者金融会社・K金融の事務所。
木曜の十四時ということもあり、客もおらず閑散としている。
そのビルの前に、ニ台の黒塗りの車が停車した。

「若、ここです」
「ついて来い」
「へい」

後部座席から降り立った男は、強面の男三人を連れ、ビルの三階へと向かう。

野田(のだ)さん。やっぱマズいんじゃないっすかね、桐生組のシマに手出すのは…」
「バカ野郎っ、俺らがいるからアイツらはおまんま喰えてんじゃねーか。少しくらいいい思いしたって、罰は当たんねーよ」
「ですが…」
「元々は俺らのシマだ。奴らが俺らのシマに手出しやがったんだから、ちったぁ(いて)ぇ思いしたらいいんだよ」

バンッ。

「よぉ~」

勢いよく開かれたドアの奥から現れたのは、黒いスーツにYシャツ姿の男が四人。
ドア越しに漏れて来た会話の主の元へと躊躇なく歩み寄る。

「面白れぇ話してんじゃねーか」
「誰だ、てめぇ」

凄みのある声。
鋭い眼つき。
室内の空気が一瞬で凍り付くような威圧感。

「テメェ、桐生のシマで好き勝手してるそうじゃねーか。随分と舐めたマネしやがって」
「ん゛っっ(桐生組の若頭?!)」

仁はデスクの上に置かれていた鋏を手にし、それを野田の喉仏に突きつけた。
野田はあまりの仁の素早さに身構えることも交わすこともできず、息を呑んで固まるしかできない。

桐生組(うち)がショバ代取らねぇって、知らねーのか?ぁあ゛?」

あまりの殺気に、すぐ傍にいる舎弟の佐々木(ささき)は肝が縮み上がる。
仁の視線がギロっと佐々木に向けられた、次の瞬間。

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