姐さんって、呼ばないで
元々運動神経のいい小春。
俺や組の奴らが頻繁に連れて来てたってのもあって、過去にホームラン賞を二回取ってる。
それが、殊の外嬉しかったのか。
俄然やる気を出し始めた。
「仁さん、勝負に買ったご褒美は?」
「フッ、褒美か。近くのカフェのオリジナルパフェはどうだ?」
「パフェ?!乗った!!」
「フフッ、相変わらずだな」
「姐さんっ、ガンバっす!!」
「うん!!私頑張るね♪」
記憶を遡るみたいで不安だったが、こいつらのお陰でいい感じのようだ。
「ほれ、お前らの分。好きに使え」
「あざっす!!」
組の奴らに一万円札を手渡し、自分らの分を両替する。
二十五球で三百円。
高いのか安いのか、他のバッセンに行ったことがないから分からないが、ここは自動販売機も豊富にあって休憩スペースも結構広い。
打席に立つ小春の場所の機械に、両替した百円玉を投入する。
初球からバットに当てる小春。
感覚は鈍ってないらしい。
金属製のバットを振り、カキーンッと小気味いい音が響く。
「二十五球中十七球、結構いいんじゃね?」
「二十五球なんてあっという間だね」
「ッ?!……そうだな」
興奮状態の小春がタメ口で話す。
こういう時間が懐かしく思えるほど、久しぶりだな。
「次、俺な」
「仁さんは何キロくらいのを?」
あ、また元に戻ってる。
そんな些細なことに一喜一憂しながら、俺は小春のいる場所の三つ左隣りに入った。
「手始めに百かな」
「すごーい!」
「凄いか?まぁ、見てろよ」
打席に入り、軽く素振り。
よし、かっ飛ばしてやる。
「兄貴、ファイトっす!」
「おぅ」