姐さんって、呼ばないで
**

「やべぇ~っ、マジ全身筋肉痛ぅぅぅ~~っ」
「明日乗れそうか?」
「あぁ~全然余裕ですよっ!!」
「痩せ我慢すんなよ」

日没前に宿泊予定の旅館に到着。
うちの組が贔屓にしている宿で、新鮮な魚介類を使った食事が売りの宿。
岡田はサーフィンを侮っていたと言いながら、ボードの上に立てるようになったことを喜んでいる。

「兄貴」

鉄がチェックインを済ませてくれたようで、みんなに鍵を配り始めた。

「別館はうちが貸し切りにしてるんで、ゆっくり過ごせるっすよ」
「サンキュ」
「俺らは別館なんで、俺のあとに付いて来て下さいっ!」

鉄が手を上げ、みんなを誘導する。

「小春」
「……はい」
「夕飯食べた後に、ちょっといいか」
「……はい」
「じゃあ、また後で」

合計二十人弱の一行。
本館から別館へと続く通路を数珠つなぎに歩く。



海の家で軽くシャワーは浴びて来たが、さすがに一日中海にいて疲れた。
疲れを取るために、仁は部屋にある内風呂へと。

俺だけ一人個室になっていて、他のみんなは二人か三人部屋。
小春は栗原と菊川と一緒で、部屋に露天風呂が付いている二間続きの部屋にしてある。

別館にも本館と同じで、大浴場はある。

「ふぅ~~っ、やっぱり温泉はいいな」

久々に温泉に浸かり、中年のおっさんのような声が漏れ出る。

小春から『海に行きませんか?』と誘われた時は正直驚いたが、クラスメイトが一緒だと分かっても、やっぱり嬉しいに変わりない。
敬語はまだ続いているが、今日みたいに無邪気に燥ぐ彼女を見れるなら、言葉なんてどうでもいいとさえ思える。

風呂から出ると、大広間に夕食の準備が整っていると声がかかった。

< 72 / 152 >

この作品をシェア

pagetop