姐さんって、呼ばないで
1年C組、カチコミ下剋上

九月上旬、始業式の朝。
夏があっという間に過ぎ去り、二学期が始まる。
まだまだじわっと汗ばむ陽気だけれど、流れる薄い雲に季節の移ろいを感じる。

「行って来まーす」

夏休みが終わると同時に自宅へと戻った私、向坂 小春は、いつもより少し早めに自宅を後にした。

「今日から二学期、頑張るぞ~♪」

高校生活に全力投球の小春は、行事の多い二学期が凄く楽しみなのだ。
スキップでも踏みそうなテンションで、詠と待ち合わせの駅へと。

「小春~~っ、ごめーん、遅くなったぁ」
「大丈夫っ!まだ余裕だよ」

サラサラとした髪質の詠は、ボブカットがよく似合う。
幼い頃から空手をしていたから、伸ばすのが苦手らしい。

ふんわり柔らかな髪質の小春の髪に埋もれるように抱きつくのが朝の日課だ。

「ん~~っ、今日もいい匂い♪」
「詠ちゃん、変な目で見られるから、ホントやめてよっ」
「いいじゃんっ!変な虫寄って来なくなるし、私のリア充のためにも」
「リア充って……」

小春が大好きな詠は周りの目も気にせず、好きスキオーラをガンガンに出す。
電車に乗る時は彼氏さながら壁になってガードするし、重たい荷物は買って持つほど。

身長百七十四センチの長身なうえ、空手や護身術も出来るから、そこら辺にいる軟弱男子よりよっぽども彼氏らしい。



学校に着くと、久しぶりにクラスメイトと盛り上がる。

「小春ちゃんたち、海に行ったんだって?」
「あぁ、うん」
「いいなぁ、うちらも行きたかったぁ。今度集まる時は絶対誘ってね?」
「うん!!」

小春も詠も明るい性格だからなのか、クラスメイトが気さくに声をかけて来る。
海水浴に行った時の話がクラスのオプチャで話に上がり、行かなかった子達から羨ましがられていたのだ。

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