君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。


「ねぇ、初優(うゆ)って彼氏欲しいなとか思わないの?」


「へ?」



ある日の昼休み。


私は友達の紗夜(さよ)にそう聞かれ、お弁当を食べる手を止めた。箸でつまんだ卵焼きが宙ぶらりんな状態で空中に浮いている。



「ほら高校1年生ももうすぐ終わるじゃん?そろそろいいひといないのかなって思って」



紗夜はスマホをいじりながらそんなことを言っていた。


彼氏、かぁ……。


今までそんなこと考えたことなかったな。そりゃもちろん恋をしたいと思ったこともあるけどそこまで深く考えたことは無かった。



「まぁ恋したいなとは思うけどそこまで彼氏欲しいって思ったことはないかな。それに、いいひとって言ってもうちの高校女子校じゃん。いったいどこで出会うのよ」


「あー、確かにね。でも私は彼氏いるよ?」



私の通う高校は県内でもそこそこ有名な女子高校。


周りは女子しかいなくて男子は先生くらいしかいない。
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