いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「もし、神谷の事で困ったことがあったらすぐに知らせてね。後で殴っておくから」
「篠原くんも厳しいですね。神谷くんには」
篠原くんの神谷くんに対する扱いに苦笑してしまう。まぁ、時々神谷くんの話は聞いていたから、色々苦労しているのだろうなとは思うけど。
飲み物とおやつの用意が出来て、お盆に乗せた。さて部屋へ戻ろうかと言う時に、篠原くんは考え込むように黙り込み、困った顔でわたしを見た。
「篠原くん、どうしたんですか?」
篠原くんのその悩まし気な顔を見ても動じなくなってしまった。わたし、大分図太くなったな。
「津田さん、ずっと俺のこと恐れ多いって言ってたよね?」
「えっ、いや、まぁ……」
確かにそんなこと言ったけど。正直、今でも時々思ってるし。
「俺って、そんなに話しにくいのかな」
「いやっ、どう、ですかね……ええっと……」
「……やっぱり話しにくいんだ」
なんて答えたらいいのか分からずに目を泳がせていると、篠原くんを落ち込ませてしまった。
そりゃあ初対面の時は、こんな美少年と会話を成立させるなんて絶対無理だと思ってたけど。何で篠原くん、今更そんなことを気にしだしたんだろう。
「えっと、なんかあったんですか? 学校で言われたとか?」
もし、篠原くんが誰かに悪口を言われたのだとしたら、絶対に許せない。わたし一人じゃ何もできないけど、わたしのバックにはお姉ちゃんが居る。
怖いんだぞ、うちのお姉ちゃんは。剣道3段持ってるし、悪口を言わせれば、平気で人を再起不能に出来るんだからな。
この間、お姉ちゃんにおつかいを頼まれたとき、間違ったものを買ってきたら「ゴキブリよりも無価値」とまで言われたんだからな。
篠原くんは、「神谷が……」と言いかけたところで少し溜息を吐いた後、「……いや、それはいいんだけど」と詳細は教えてくれなかった。わたしが首を傾げていると、篠原くんはいつもみたいにふわりと柔らかく微笑んだ。
「ちょっとね。でも、大丈夫。大した事ではないから」
「……そう、ですか?」
悩みがあるなら聞くのに、そんな風に言われると、もう何も聞けなくなっちゃうな。
「篠原くん」
「ん? なに、津田さん」
「もし、必要でしたら、いつでもお姉ちゃんに土下座する用意はできてますので」
篠原くんのためなら、この安い頭、いくらでも下げる所存だ。
「なんで土下座?」
篠原くんが可笑しそうにくすくす笑う。わたしたちは、お菓子と飲み物を持って部屋へ戻った。