幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 すると、穂波君が側に寄ってくる。
「ん?」

 何だろう、とわたしが顔を見上げると、
「お願いだから、大人しくしていて。本田さん」
 そう呟いて―――― 
 わたしの額にキスをした。

 すとん、と腰が抜けて、わたしはベッドの上にお尻をつく。
 何が起こったのか分からなかった。
 ただ、心よりも身体が先に動いて、腰を抜かした。

 わたしがハッとして顔を見上げると、穂波君は笑顔のまま、
「お昼まで休んでいて。お弁当作ってきたから、椎名さんも呼んで一緒に食べよう」
 と言う。

 それから踵を返して、保健室から出て行った。
 残されたわたしは、その様子を見送りながら、頬が熱くなっていくのを感じていた。
 キス、された。

 唇ではないけど、初めてキスされてしまった。
 額に触れた感触がまざまざと思い出されて、心音がにわかに速くなっていくのが分かる。
 穂波君はわたしを止めるために、仕方なくその方法をとっただけのような気がするし、そんなに深い意味はないのだと思う。

 額のキスは友愛の証って聞いたことあるし。
 頭ではそう思うのに、頬がちりちりと焦れるのは、止まないのだった。
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