幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 そう、そんな顛末を経て、今こうして、男子生徒とご老人を目の前にしている。
 そういえば、戸田さんや幸太郎はどこにいったんだろう。
 わたしを気絶させてここまで連れてきたのは、きっと戸田さんだし、一枚噛んでいるのは間違いなさそうなんだけれど。

「おい、聞いていたのか?」
 わたしが考え事に頭を染めていたら、男子生徒から声がかかる。
「えーと……聞いてませんでした」

「では、僕の生い立ちについてまた最初から話そう」
「い、いや。そういうものは良いので、早く本題に入ってください」
 そうだった。
 さっきから、この男子生徒は、自分の出生の秘密から始まり新生児の成長からその他の細かい自分に関する事項を、時々ご老人の合いの手を受けながら、とうとうと話していた。

 それがあまりにも長いので、こうして考え事の世界にわたしは逃避していたのだ。
 だって、自分の出生したちょうどその時間に、アメリカのある夫妻が未確認飛行物体に出くわしたと証言している、なんていう類の話を何本立てでされてもどうしていいか分からない。

 しかも、そんなに長く話をしていても、肝心の名前や学年にはまだ触れていないのだからやってられない。
 わたしが切り出すと、男子生徒は顎に手を当て、少し考えると、
「そうだな、本題に入ろう。僕のことはこれから知ってもらえればいい」
 そう言った。
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