幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 中庭から一番近い玄関から校舎に入ると、わたしは一路、放送室を目指した。
 放送室は、職員室や保健室、事務室を始め、生徒会室など委員会活動全般に使われる部屋のある実務棟の二階にある。

 わたしが入った実技棟からだと、実務棟は普段授業をしている一般棟を越えた先だ。
 そのため、わたしはそれぞれの棟をつないでいる渡り廊下を通り、実務棟に入った。

 夏休みだし、ひょっとしたら渡り廊下への出入り口が塞がれているかも、とも思ったけれど、そんな心配は必要なかったようで、すんなり通ることが出来た。

 渡り廊下への戸は、子犬1匹が通れる位の幅に開いたままになっていた。
 これはもしかしなくても、幸太郎だ。

 渡り廊下を通り、実務棟の階段を上がって、少し迷った。
 そういえば実務棟の二階に上がるのは初めてだと気がついたからだ。
 どこに放送室があるのか分からないな、と思い始めたときに、人の声が耳に入った。

「それって……くれるってことだよね?」
『……ちゃんと……ねーだろ?』

「それは……から……もらうつもりだよ」
『じゃあ……くれよ』

 途切れ途切れにしか聞こえなかったけれど、女の子の声と……多分、幸太郎の声だ。
 声の出所を確かめながら廊下を行くと、ある部屋にたどり着いた。
 見ると、ドアの上のプレートにマイクのマークがかかれているし、ドアのガラスの部分から光が入らないように内側で暗幕が引かれているようだった。

 多分ここが放送室だ。
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