幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
●出来レースの花嫁
「お腹のあたり、きつくないですか?」
女性がそう尋ね、
「大丈夫です」
わたしはそう答える。
彼女は、先ほどからわたしの袴の帯を締めてくれていた。
それから、今度は後ろから年配の女性がやってきて、二人がかりで羽織に袖をとおしてもらい、羽織を巻き込む形で再び帯が締められる。
姿見で自分の姿を見ると、真っ白な着物に緋色の長袴を履いていて、何だか、神社の巫女さんみたいだ。
「それにしても、昨日は大変だったわね。神主さんも、あんなに志願者が多いなんて、思わなかったそうよ」
年配の女性はそう言いながら、わたしの首に鏡をかける。そばにいた若年の女性は鏡からのびる太目の布をわたしの肩に通しながら、
「パワースポットが流行っているからですかねー」
と答える。
「あら、真奈美ちゃんも舞い巫女さんやりたかったの?」
「いやーわたしは、そういう柄じゃないですよ」
なんていう会話を聞いていたら、
「火恩寺の住職の息子さんが、あなたのことを強く推薦していたから、落ち着くとこに落ち着いた感じね」
そう話を振られ、
「火恩寺の方の、ああ、龍彦くん?彼と付き合ってるの?」
「あらそうなの?やっぱり」
二人の好奇の目に晒される羽目になる。
作業の手を止め一様にこちらを見るから、
「つ、付き合ってないですよ?」
と気持ち後ずさりながら言うと、なんだそうなのーとあからさまにがっかりした様子で、2人は作業に戻る。
「それにしても、昨日は大変だったわあ。人数がすごいんだもの……」
と年配の女性がため息まじり口にしたので、わたしの昨日のことを思い出していた。