幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 昨日はあの後、火恩寺君に言われたとおり社務所前に行くと、膨大な人数の女の人がそこに集まっていた。

 わたしに気づいた火恩寺君がやって来たので事情を聞くと、どうやら集まった女性はみんな最後の花嫁候補だという。
 中には高塚先輩を初めとして学校で見たことのある顔がちらほら見えた。

 あとから聞くと、どうやら、最後の花嫁を務めた女性は幸せになれるという言い伝えがあるらしく、縁結びの効果を期待して、志願する女性が多いのだという。

 特に最近、女性誌やネットの記事で大きく取り上げられたこともあってか、何年か前にやったものよりも圧倒的に多くの女性が集まることになったらしい。

 そんな話を聞くと、火恩寺君のすすめるままに来てしまったけれど、場違いなような気がしてしまう。

 しかもわたしの場合、まほりや幸太郎、穂波君に松代君と大勢で連れ立っているので、変に目立っていた。
 というか、主にでっかい彫像と、えんえんと食べ続けている幸太郎が目立っていた。

 その上、穂波君といるところを高塚先輩に見られると後々めんどくさそうだな、と思い、
「こんなにいるなら、わたし出ないほうがいい気がするけどな……」
 なんて口にしたら、
「姐御以外に誰がやるんです?集まった連中にはくじを引いてもらいますが、そんなもの出来レースです。姐御になるに決まってます!」
 と火恩寺君はとんでもないことを言う。

「主催側が出来レース公言しちゃだめじゃない?」
「姐御の幸いが俺の幸いです。ああ、くじ引きが始まる。俺はちょっと細工して来ます」
 と言って、説明も途中のまま、火恩寺君は神主さんらしき人のところへ駆け寄っていく。

 話を、聞いてください、とわたしはその背中に強く言いたかった。
 そんな顛末を経て、出来レースの結果、わたしは最後の花嫁に選ばれてしまったのだ。

 高塚先輩のものすごーい視線を受けながら。
 いますぐにでも、先輩に権利を譲ります、と言いたかったけれど、違う方向からの火恩寺君のつよーい視線でわたしは動けなかった。

 ああ、板挟みってこういうことを言うのね……なんて思いながら、明日午後4時に社務所に来てください、と神主さんに言い渡された。そして今日がある。
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