幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 目の前でまだ小さくて可愛い頃の幸太郎がまっすぐな眼差しでこっちを見ながら、怒っていた。

 幸太郎はぎゅうっと眉根を寄せて、
「ドッグブルーなんてかっこよくない!」と怒る。

 そしてわたしも、
「かっこいいもん!レッドなんかより、ずっとかっこいいもん!」と応戦する。

 この日は幸太郎の家で見ていたようで、幸太郎のお母さんがどっちもかっこいいわよ、と妥協案をあげるけれど、そんな心づかいも幼稚園児には届かず、喧嘩はヒートアップするばかりだった。

 わたしは昔から意地っ張りだったけれど、幸太郎はそこまで自分を押し通すことは少なくて、すぐにけろっと気分を転換させてしまうほうだったけれど、このやり取りだけはなぜかいつも決まって喧嘩にまでなってしまった。

 わたしは、そんなやり取りを当時の自分の目線から眺めていた。

 お互い言葉足らずで、わたしはただ自分の好きなキャラクターの方がかっこいい、と言い、幸太郎はかっこよくない、というやり取りがえんえんと続くだけなのに、本人達は勝手にどんどん熱くなっていき、最後にはわんわん泣き出してしまった。
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