幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「……」
 そしてそのままで10秒ほどそうしているうちに、幸太郎が徐々に顔をしかめていく。

「……ひょっとして、話す内容忘れてる?」
「い、いや忘れてねーって!順を追って話そうと思ったら、思考がぶっとんだだけで」
「コータロー、そういうの苦手だもんね……」

「哀れみの眼差しを向けるなよ!」
「被害妄想だってば……。それに順を追わなくても別にいいよ。はっきり言って?昼休み終わっちゃうし」
「うーん、はっきりか。分かった」

 幸太郎は一息つくと、
「龍を倒すのだー!」
 とそれはもう大きな声で言った。
 あまりにも大きな声なので耳にぎゃんぎゃん響く。

「声が大きいよ!」
「ミサキもでかいって……!」
 お互い耳を押さえながら叫びあう。何この状況。

「と、とにかく、龍を倒すって何?」
「そのまんまの意味だって。龍を倒せば、ミサキも追い回されなくてすむだろ?」
「でも、倒すのはまずい気がするよ。一応あの龍って、この土地の守り神みたいだし」

 それに、あんな大きな龍を倒すこと自体、想像できない。
「けどさ、何とかしねーと……」
 珍しく幸太郎がいいよどむ。
「何?」
「俺がすごくやだ」
 唇を曲げ、少しすねた顔をして幸太郎は言う。

「何でコータローがやなの?」
 何でだろう。そう聞くだけなのに、少し慎重になっている自分がいる。
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