幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「待て!」
 とん、とコンクリートを蹴る音がして、誰かが彼をすくいあげた。
 見ると、いつもどおり申しわけ程度に制服のズボンをはいて、紫のタンクトップを着るというスタイルの火恩寺君がそこにいた。

 知った顔がちゃんと人間のまま現れてくれて、わたしは少し安心した。
「おい、ネズミ。なりはこんなだが、こいつぁ、この土地の守り神だ。食わせるわけにゃいかねぇよ」
 そうして、指の先でつまんだ松代君に話しかける。

 この土地の守り神、という言葉が引っかかった。
 それって、焔生の龍じゃなかったっけ?と思ったからだ。

「そんなミミズが守り神なのか?」
 松代君がそう言うと、
「元々の姿は龍だ。焔生の龍。ネズミの中でもそのくらいは知られてるんじゃねぇか?」

 ネズミが話しているという根本的な問題は完全にスルーして、火恩寺君はそう答えながら、松代君を床の上に戻す。
 というか、ネズミが話していることに疑いすら抱いていないような……。
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