幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「けど、穂波君が持っているって分かったなら、その場で返してもらえば良かったのに……」
 わたしがそう口にすると、火恩寺君がカッと目を見開く。

「俺が穂波さんにものを頼むだと……?」
「そ、そんな怖い顔しないで!」
 とわたしが言うそばから、すずめがちゅんちゅんとやかましく鳴き始める。

「あーもう分かったから!」
「タツヒコ、女性に凄むものではありませんよ。龍、あなたも少しは辛抱したらどうです」

 男性がそう穏やかな調子で諌めてくれる。
 そして、男性はわたしに向き直り、
「時に、ミサキさん。あなたは、穂波青年と親しいのですか?」
 そう尋ねてくる。

「元々はクラスメイトだし、この頃は色々あって、親しくしていた、って言えると思います。でも、この世界の穂波君は、わたしのことを知らないと思うし、親しいとは言えないですね……」
「そうですか。けれど、彼を恐れているわけではないようですね」

「恐れている?どういう意味ですか?」
 男性は火恩寺君に視線を送る。

 火恩寺君は気まずそうに顔を背けるのみだ。
 何だろう?
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