幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「お帰りコータロー」
 自然にそう口をついて出た。

 幸太郎は、驚いた顔をして、
「こ、答えになってねー……」
 にわかに顔を赤くする。

 けれど、すぐにいつもの調子に戻って、
「ただいま、ミサキ。ハグしとく?」
 そんなことを言いながら、両手を広げてみせる。

「しない。それよりプリンスを探しに行こう。焔ちゃんも協力してよね!」
『ああ』
「な、何かミサキ、たくましくなったな?」

「そんなことないよ。ちょっとだけ、分かったことがあるだけ」
「分かった?」
「うん――――」

 そのとき、不意に何かに呼ばれたような気がして、空を見上げる。
 龍の鱗のような雲が、青く高い空へと広くたなびいている。

 すっかり秋の空だ。
 夏の終わりは、近い。
 夏の間のパニックは夏の間に解決しなくちゃね。
 きっと、去年の秋よりいい秋が来るはずだから。

「それと、コータロー」
「ん、何だよ?」
「全部終わったら、話があるから」
 ちょっとだけ、勇気を出してみてもいいよね。
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