生贄教室
外は白みがかってきて、モヤが立ち込めている。
美麗はスマホを持っていることを忘れて、それは手からすべり落ちた。

床にスマホが落ちる音にも気が付かずに立ち上がると、ゆっくりと窓へ向かう。
朝日が差し込むグラウンドから立ち上っている白いモヤ。

それは朝もやなんかじゃなかった。
大きな化け物の体がジワジワと溢れ出している。
美麗は窓に両手をついてその光景を見つめる。

《化け物は朝日を浴びて逃げる可能性があります。またはそのまま死んでしまう可能性も……》
モヤが湧き上がると共にその体は小さくしぼんでいくのを見た。

あれだけ沢山の生徒たちを食べて成長を続けてきた化け物が、どんどん縮んでいく。
美麗は数歩後ずさりをして、後ろにあった椅子に座り込んだ。

時刻は午前4時40分。
化け物はまだ暴れ出さない。
< 216 / 222 >

この作品をシェア

pagetop