クラスで人気者の幼なじみと『離婚』前提の偽装婚約~この関係はフリだから、ふたりの時に溺愛なんて不要では!?~
第4話 熱が出ました


○桜井家、二階の成美の部屋(日曜午前中)



38.7度を示す体温計。

冷却効果があるジェルシートをおでこに貼って、ベッドで横になっている成美。目は開いている。

熱があるため顔が赤い。

38.7度の体温計を手にしている心配顔の母が成美へ声をかける。



母「お母さん、そろそろ仕事に行かないとだけど、どうする、お兄ちゃんに来てもらおうか?」



お父さんは朝から出張、とスーツにキャリーケースとビジネスバッグを持っている父の描写。



成美「大丈夫、寝てれば熱も下がると思うから……」

母「あの遊園地、あんなに水で濡れるアトラクションなんてあったのねぇ……」



母は不思議顔。



成美(昨日は遊園地じゃなくて海に行ったんだよね……)



(回想)うしろ向きで成美が海に倒れ、水しぶきが上がった描写。(回想終了)



戒理「着替えの服、戒理くんが買ってくれたんでしょ。治ったらあとでもう一度お礼言うのよ」

成美「ん……分かった、いってらっしゃい……」



母が部屋を出て行き、ベッドのサイドテーブルにある時計を見ると9時35分を示していた。



成美(確か早朝から仕事があるって昨日言ってたっけ。今ごろ撮影してるのかな、戒理……)



ぼわッ、と昨日海で戒理にキスされたシーンを思い出し、赤くなる成美。



成美「寝よ……」





○桜井家、二階の成美の部屋(同日お昼前)



成美が目を覚ますと、ぼんやりと人影が見えた。



成美「戒理……?」

戒理「起きた?」



ベッドのすぐそばで膝立ちになり、ショボン顔で心配そうに成美を見つめる戒理。



成美「戒理……なんでいるの?」

戒理「成美のお母さんからスマホにメッセージが入ってた。今日は仕事が終わるの遅いから成美の様子を見てもらいたいって」



サイドテーブルにある時計は11時25分を示している。



戒理「ごめん、熱が出たの俺が昨日海に連れていったせいだ」

成美「ぃゃ、それはいいんだけど。お昼まで仕事じゃなかったっけ?」



ベッドの上で上半身を起こす成美。

成美に向かって戒理が笑顔でVサイン。



戒理「全部一発オッケーで撮影早く終わらせた」

成美「すごいね……ハ、ハ、ハックションっっ……ぁ」



成美の鼻から、たらぁーん、と見事な鼻水が垂れている。

途端に青褪める成美の顔。



成美(好きな人の前で鼻水たらすなんて、女子として終わってる……)



戒理は特に気にする様子もなくベッドのサイドテーブルにあるティッシュを何枚かとった。

むしろ成美のお世話をするのが楽しそうに、戒理は笑顔。



戒理「漫画みたいな鼻水だな、ほら、チーンして」



成美(ぅぅ、恥ずかしいよぅ……)



成美は顔を赤くしながら、戒理に鼻を拭いてもらっている。

立ち上がってゴミ箱にティッシュを捨てる戒理。



戒理「どうする何か食べる? お粥くらいなら作れるけど」

成美「うーん、食欲ない……それよりも」

戒理「それよりも、何?」

成美「吐く……ッ」



トイレに行こうとベッドから急いで出た成美だが足元がふらついて戒理に体を支えられる。

その瞬間、オロロロ……、と戒理の服へかけるように吐いてしまう。前のめりの姿勢のため、成美のパジャマは無事。



戒理「まだ気持ち悪い? トイレ行くか?」



成美がベッドに腰かけるのを手を添えて手伝いながら、心配そうに聞く戒理。

戒理の服のお腹あたりには、成美の嘔吐物がついている。

嘔吐物のところはキラキラしていて、『都合により詳細はお見せできません』の表示。



成美(好きな人に嘔吐するなんて、最悪だ……)



絶望したような表情で、フッと、意識を手放す成美。





○桜井家、二階の成美の部屋(午後)



パチ、と目を覚ます成美。



成美(あれ、私、寝てた……?)



時計を見るために寝返りをして反対側を向く成美。



成美(今、何時だろ……)



すると目の前に、程よく鍛えられた男性の裸の胸板が。

驚きのあまり、ガバッ、と上半身を起こす成美。

布団も一緒に持ち上げたため、横で寝ているのがボクサーパンツ姿の戒理だと分かる。



戒理「……ぁ、やべ、寝てたか俺」



目を擦りながら横になったまま呟く戒理。

寝起きで色気がだだ漏れの戒理を見て、成美はこれ以上ないほど赤くなる。



成美「か、戒理、なんで裸なの!?」

戒理「裸じゃない。パンツは穿いてる」

成美「ぃゃ、そういう問題じゃなくて、服は?」

戒理「成美が俺の服に吐いたから、洗濯機借りた」



オロロロ……と戒理の服に吐いたシーンを思い出す成美。



成美「そ、その節は、た、大変申し訳ございません……」

戒理「くっついて布団入ってないと寒いんだけど」



成美の事をギュッと抱き寄せ、布団をかけながら横になる戒理。

ベッドでふたり、添い寝しているような状態に。



成美「は、放して」



恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてジタバタする成美。



戒理「モゾモゾ動かないで成美、硬くなったら困るから」

成美「硬くなったら困るって何が?」

戒理「……健全な高校生男子の、ナニかだけど知りたい?」



性的興奮による男性特有の体の反応の事を戒理が言っているのだと気づき、成美は目をギュッと瞑りながら動くのをやめた。



成美「じ、じっとしてます……ッ」

戒理「いい子」



抱きしめて添い寝しながら成美の頭を撫でる戒理。

戒理は夢うつつのため、そんなに照れた様子はない。

上半身裸の戒理の腕に包まれて、成美は顔を真っ赤にしている。



成美(また熱上がりそ……)




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