エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 陰のある微笑と絶妙にマッチした軽口は、彼との会話をするにあたって魅力的なスパイスになっていたから。

 でも、今は怖い。

 なにを言われても彼の言葉が胸に突き刺さる。

「私たちの関係は五年前に終わったはずでしょ」

「ああ、終わった」

 そう言った北斗が、私の顔の真横の壁に手をつく。

「君が終わらせたんだ。勝手に」

 追い詰められ、完全に逃げ場を失って息を呑む。

 吐息を感じる距離も、今は胸を高鳴らせるよりも締め付けた。

「純美」

 全身の力が抜けるほど甘い声が私の名を囁く。

「この五年間、君を忘れた日はなかった」

 私だって、と言えたらどれだけよかっただろう。

< 33 / 245 >

この作品をシェア

pagetop