エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 北斗に与えている痛みの百万分の一でもいいから、自分に苦しみを与えてやりたかった。

「俺が以外を愛せると本気で思って――」

「この世界にどれだけ魅力的な女性がいるか知ってるでしょ? どうせ三日もすれば私のことなんか忘れるに決まってる」

 私以外の誰も好きにならないで──。

 心の奥ではそう叫んでいるけれど、彼に悟らせるわけにはいかない。

「それで、どうする? ほかの男を愛してる女と結婚する?」

「……俺は」

「私はしたくない。だってあなたのこと──」

 この先を言わなければ。彼を振り切るために。

「──顔も見たくないくらい、嫌いになったんだから」

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