エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 彼は海外旅行の資金を貯めるのが趣味だった。だから家具は必要最低限だったし、家電もさほど多くなかったのを覚えている。

 買うものといえば衣服と、新しい言語を学ぶための書籍くらいだったはずだ。

「それは私のメリットのほうが大きいんじゃないの? だってうちの借金なんだよ」

 彼にその重荷を背負わせたくないから、あの日別れを告げたというのに、これではなにも変わらない。

「そこまですれば、逃げようと思わないだろう?」

 膝を握る手に力が入る。

 つまり、実家への破格の親切は私を縛るためのものなのだ。

「……そうだね。そこまでされたら、もう逃げられない」

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