『絶食男子、解禁』


契約しているスポーツ選手から、直前の“広告媒体の変更依頼“の連絡を受け、急遽京都入りした。
本来は上司である真中さんが担当している選手だが、現在シンガポールに出張中ということもあり、俺が対応する事となった。

スポンサー契約には必須の六項目がある(広告媒体、付帯権利、契約期間、掲出条件、広告料金、支払い条件)。
その中でも広告媒体は細かく記載されていて、公式戦のユニフォームや練習着から始まり、試合会場内外の看板や横断幕等、映像モニターの設置の有無や記者会見やインタビュー時のバックボード等の表示に関してまで。

スポンサー契約を締結すると、その選手の出場する試合会場や練習場所、遠征費や日々のケアに至るまで、契約している期間内(契約内容に基づき)の支援を行う義務が発生するため、看板一つとっても規定サイズやルールに則って対応しなければならず、印刷ミスや変更に伴う連絡ミス等で広告を表示できないとなれば致命的。

大概の選手は数社とスポンサー契約するため、ユニフォームにも複数の表示がある。
けれど、この一つがルール違反となれば、それ自体着ることができない。

公式戦に支障をきたさなければ問題ないが、これが試合直前に発覚した場合、他のスポンサー契約会社との賠償金も発生してくる。
事前に連絡を怠った選手側にも問題があるが、確認を怠ったうちの会社にも非がある。


担当のスタッフと対応にあたり、ツアー初日までには何とか間に合うこととなった。

「すみません、楢崎さん」
「次からは何重にも確認をお願いします」
「……はい」

該当選手が契約している他のスポンサー会社への通達書類を作成する。
試合に間に合わなければ、数億円では済まない案件だからだ。

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