スーパー戦隊ヒーローズ1 剛球戦隊ケッセンジャー 見よ! 我らが青春の炎を!

第1章 戦いの時は来た。

 5月、gwも終わった東京である。 ここは都立第一高校のグラウンド。
地区大会を前に野球部が特訓をしている。
 「おーい、寛貴! 飛んだぞ!」 「あいよ!」
「こらーーーー! 何処を見てるんだ!」 「うわ、、、。」
「またトンネル化。 そうがねえなあ。 フライくらいちゃんと取ってくれよ。」 「ごめんごめん。」
「謝りゃいいってもんでもないんだぞ。 今年くらいは地区大会で勝たないとどうしようもないんだからな。」 「分かったよ。」
グラウンドの隅に転がったボールを拾い上げた寛貴は土を払うと倉庫前に座っている洋美をチラッと見た。 「私なんか見なくていいから集中しなさいよね。」

 そんな部活も終わって昇降口に出てきた寛貴は何かが落ちてくるのを見掛けて足を止めた。 「何だろう?」
彼がグラウンドの隅まで駆け寄ると草むらの中で何かが光っているのを見付けた。
「これは、、、。」 「おーい、寛貴や。 そこで何をしてるんだ?」
「いや、何か落ちてきたなと思って来てみたらこんなのが落ちてたんだ。」
立ち竦んでいる寛貴を不思議に思った正弘は光っている物を拾い上げた。
「誰がこんな物を?」 「分からない。 空から降ってきたんだ。」
「ねえねえ、お兄ちゃんたち そこで何をしてるの?」 そこへ正弘の妹 洋美も駆け寄ってきた。
「きれいなバッヂじゃない。 どうしたの?」 三人がバッヂを見詰めていると何処からか声が聞こえてきた。
 「高き山に黒き雲現れたり。 勇者たちよ 立ち上がるのは今だ。
さあ、七色の虹のごとくに立ち上がれ! 立ち上がれ!」
「高き山って富士山のことじゃないの? 今朝、変なニュースを聞いたわよ。」

 そう、この日の朝、テレビ局は奇妙なニュースを伝えていた。
 「こちら、富士山北側の尾根に来ています。 天気予報では快晴の、、、はずなんですが。 うわーーーーー!」
中継していた記者を黒い雲が包んだかと思うとあっという間に消え去ってしまったのだ。 驚いた政府は警察や防護隊を出動させて捜索を開始したが、、、。
以来、このニュースは日本全国で大騒ぎを引き起こしてしまった。

 「さあ、立ち上がれ!」 「やるぞ!」
正弘はバッヂを胸に当てて鋭く叫んだ。

 その頃、新宿駅前は突然現れたシルバースーツの兵士に襲撃されて大混乱に陥っていた。
「殺せ! 我々に逆らう人間どもは皆殺しにしろ!」
地球防護隊も懸命に応戦しているがまったく歯が立たない。 装甲車も次々に破壊されてしまって殲滅も時間の問題である。
「誰も居ないのか? やつらを止められるやつは居ないのか? このままでは殲滅されてしまう。」
防護隊日本本部長 篠崎雄介が苦しみながら空を見上げた時だった。
暗い夜空に虹色の光が輝き、その中から三人の人影が下りてきたのだ。

 「我ら剛球戦隊 ケッセンジャー! ベーサー軍団よ やっと見付けたぞ!」
「何を小癪な、、、。 ベーサーの怖さを思い知らせてやるわ。 やれーーー!」
「ホワイト ピンク! 行くぜ!」 「オー!」
ベーサーアーミーが三人に飛び掛かっていく。 「ブルーグローブ!」
「ピンクサンダー! 舐めるんじゃないわよ!」 「おらおら行くぜ! ホワイトシュートだ!」
「えーい、今夜はこれくらいにしてやるわ。 次に会ったらただじゃおかねえからな!」
兵士たちは金色の霧の中へ吸い込まれるように消えていった。

 「しかし、ベーサー軍団って何者なんだ?」 正弘は消えた兵士たちを追い掛けるように呟いた。
「分からない。 やつらがどうして地球に現れたのかも。」
「聞いたことが有るわよ。 秘宝 センターリングの話。」 「センターリング?」
 寛貴は自分たちに迫ってくる得体の知れぬ恐怖を感じながら空を仰いだ。

 「何だと? 我々の仇敵であるケッセンジャーが現れただと?」 「如何なさいますか?」
「構わん。 どんな手を使ってもやつらを抹殺するのだ。 地球侵略計画を断固成功させるのだ。」
 ベーサーは動き出した。 ケッセンジャーも立ち上がった。
この先、ベーサーが如何なる悪だくみを仕掛けてくるのか予想は出来ない。
しかしやるしかないのだ。 地球を守るために。

 それから数日後、いつものように寛貴たち三人は部活を終えて通学路を歩いていた。 すると、、、。
「ねえ、寛貴 あれって何?」 洋美が指差す方向を見てみると、茂みの中に七色の縁取りをされた不思議な穴が開いていた。
「これは、、、。」 正弘も中を覗いていたのだが、、、。
「これはアンパイヤー星のデンタ基地の入り口だよ。 入ってみよう。」 そう言って先へ歩いて行った。

 少し行くとマジックゲートが有り、バッヂに反応してゆっくりと開いた。 「ここは、、、。」
「ようこそ。 よくここへ来てくれた。」 寛貴たちを出迎えるように二人の青年が立っていた。
「あなたたちは?」 「アンパイヤー星から派遣されたニールとキールです。 よろしく。」
寛貴は二人が同じバッヂを胸に付けていることを知って安堵の息を吐いた。

 「いいだろう。 これでブルー ホワイト ピンク ブラック シルバーの5人が揃ったわけだな。」
「あの声は?」 洋美が不思議そうな顔をした。
「あれはぼくらの守護神 アンティーノスだよ。」 「どっかで聞いた声だなって思った。」
 「よろしい。 君たちに強力な武器を与えよう。 緑色の扉を開けなさい。」
言われるままに扉を開けてみると、そこには巨大な戦艦が彼らを待っていた。
「これはエースキャッチャー。 飛行モードを自由に切り替えられるうえに飛行艇としても潜航艇としても使える有能な戦艦だ。
操縦はブラック、君に任せるぞ。」 「はい。」
 ブラックがキャビネットハッチを開けると5人はコックピットへ。
最前列はブラック、後ろにブルーとシルバーが、最後列にホワイトとピンクが座った。
 各座席にはペンダントが掛けられていた。 「そのペンダントはあらゆる状況に対応したマニュアル記憶装置だ。 無くさないように。」
 「よし。 エースキャッチャー エンジン起動!」 「コマンドモード オープン!」
「シューターピックアップ 開放!」 「エースキャッチャー 発進!」
 基地奥のシューターボックスからエースキャッチャーは夜空へ飛び立った。
何が彼らを待ち受けているのか、誰にも分からない。 だが恐れている暇は無いのだ。
ベーサー軍団はどんな手を使ってくるか予想できない極悪な組織である。 何を企んでいるのか分からない。
なぜ戦っているのかも分からない。 だけど戦わずには居られない。
頭上には暗黒の夜空が広がっている。 寛貴たちの未来を案ずるように。
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