アラ還は、もう恋しちゃだめなんですか?
「…?」
急に腕を引っ張られ、なぜが怒っているような匠先生がいた。
言いたいことだけ言って、逃げるようにさっさと帰ってきたから、やっぱり怒ってる。
そりゃ怒るよなぁ。
でももう話すこともないだろうし、お試しも仮もお終いでしょ。
さっきお母様に正直に話しすぎたんだから。
そこへなぜか突然、引き摺られるようにデパートに入っていった。
なんでデパート?
言いたいことがあるならさっさと言ってよぅ。

何を考えているのかますます分からない。
大量の私の下着や部屋着、化粧品など買い回る。
私の物なら私が払うと言ったら、『俺の部屋に置いておけば、便利だから』とか。
なぜ?
『それに俺の部屋に置くから俺の物だな』と言う。
なぜあなたの部屋に私の物を?
いや、あなたの物か??
仮はもう終わっているはずのに。

片手いっぱいにショップバックを持って、もう片手は私の手首をつかんでタクシー乗り場まで来て、
「とりあえず、来て」と。

イライラは治まったみたいだけれども。
なぜか少し慌てて、部屋に着くなり手に持っている物を投げて、私を壁に押し当てもたれ掛かってきた。
「…。」
息が首筋にかかり、力が脱ける。
声は聞き取れなかったけど、特に何も言ってないだろう。
これは壁ドン?
いやいや、あんなに慌てて中に入っていったんだから、靴を脱ぐとき蹴躓いて恥ずかしくなったんだ。
ちょっと赤くなってたし…。
その後先生は何も言ってないし、普通に中に入っていった。
恥ずかしかったんだ。
違う意味で私だけが意識しすぎて恥ずかしい。
この歳にして、経験値のなさが悔やまれる。

「飲む?」
中に入っていくと、手洗いうがいを済ませた先生が、さっき買ったお揃いのマグカップを持っていた。
うん。通常の『匠先生』だ。
何を話すことがあるんだろうか。

コーヒーを両手に持ってソファーに掛けた。
「お疲れ様。今日はありがとう。
ゆっくり話せてなかったし、色々聞きたいことあるでしょ」

この落ち着きは何?
さっき蹴躓いた照れ隠し?
聞きたい事はいっぱいある。
まず、私の立ち位置が判らない。
仮はどうなった?
あの買い物は?
「ん?」
なに急に顔を近づけないで、聞きたいけど聞けないこの状況。
何を?なぜ?
まだ続くの、この関係。
何時もは先生が話を振ってくれたから応えてたけど、何を話せば良いか分からないし、
この展開、理解できない。
話をするときは目を見て話せって、親から言われてたけど、無理です。
あーー、見つめないで!

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